
提案は通らない。でも、何が足りないのかわからない。
そう感じている営業責任者は少なくありません。
原因はスキル不足でも、熱意の問題でもありません。提案の主語が「自社商品を売りたい」になっているからです。
バイヤーが聞きたいのは「この商品でうちの売場がどう変わるか」です。その答えを提案できる営業担当者が、バイヤーから相談される存在になります。
このページでは、バイヤーから相談される営業が実践している「提案の型」を解説します。
1.提案の趣旨を、「売りたい」から「売れるようにしたい」へ
「多くの提案が通らない理由は、提案の趣旨にあります。「自社商品をどう売るか」を起点に組み立てた提案は、どれだけロジックが整っていても、バイヤーには「売り込み」に映ります。
バイヤーが考えているのは、カテゴリー全体をどう伸ばすか、来期の売場をどう変えるか、という視点です。
「どう売るか」から「どう売れるようにするか」へ。 その出発点の違いが、提案が通るかどうかの分岐点になります。
1-1.提案の趣旨がズレる、4つの理由
提案の趣旨が「売りたい」に引き戻されてしまうのには、理由があります。どれも悪意のある行動ではなく、日常の営業活動の中で自然に生まれるズレです。心当たりがあれば、そこが変えるべき起点になります。
1. 視座のズレ
- あなたの視点: 「自社商品を売り込みたい」
- 欠けている視点: 「カテゴリーの方針を捉えていない」
- (解説:バイヤーは「カテゴリー全体」をどう伸ばすかを考えています。自社商品の話しかしない提案は、視座が低すぎます。)
2. 時間軸のズレ
- あなたの視点: 「今期の売上を作りたい」
- 欠けている視点: 「将来のビジョン(中長期)に寄与していない」
- (解説:目先の数字合わせだけの提案は、将来を見据えている経営層やバイヤーには「投資価値がない」と判断されます。)
3. 根拠のズレ
- あなたの視点: 「過去の成功体験や『勘』頼み」
- 欠けている視点: 「客観的なデータ(事実)に基づいた検証がない」
- (解説:「昔はこれで売れた」という経験則は通用しません。市場の変化を示すファクト(データ)だけが共通言語になります。)
4. 優先度のズレ
- あなたの視点: 「自社にとっての最重要事項」
- 欠けている視点: 「得意先にとっての優先順位とズレている」
- (解説:あなたが売りたいタイミングと、得意先が売りたいタイミングは違います。相手のカレンダーに合わせなければ、提案は通りません。)

1つでも心当たりがあれば、そこから変えていきましょう。
1-2.提案の趣旨を変える「3つの視点」
趣旨を「売れるようにしたい」に変えるには、視点を広げる必要があります。バイヤーが見ている景色を、3つの方向から捉えることが出発点になります。
視点1:【経営の視点】全社方針との「接続」を作る
- 目の前のバイヤーだけでなく、その背後にいる役員や経営層の悩みを知っていますか?
- 提案を「得意先の方針」や「重点テーマ(例:買上げ個数増加)」と結びつけることで、あなたの提案は単なる「改善」から、経営課題を解決する「提案」へと変わります。
視点2:【現場の視点】バイヤーの「目と耳」になる
- あなたは、多忙なバイヤーに代わり、店舗(売場)の代弁者になれていますか?
- 「POSデータには表れないショッパーの行動」や「パートさんの生の声」といった一次情報を提供することで、あなたは単なる業者から、バイヤーから相談される存在に近づきます。
視点3:【将来の視点】未来のビジョンに「投資」させる
- 得意先が、1年後、3年後にどこへ向かおうとしているか把握していますか?
- 目先の価格競争ではなく、未来のビジョンを実現するための「投資」として提案を位置づけることで、高い価値を認められます。

提案にこれらの視点を取り入れるには、日頃からの関係構築が土台になります。関係構築の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています
👉 【詳細解説】ザイアンスの法則|営業で「選ばれる人」になる、科学的な関係構築術
2.思考を「行動の型」にする5つのステップ
視点を変えただけでは、現場は動きません。 3つの視点を、実際の提案書に落とし込むための型を解説します。 この5つのステップを身につけることで、「何となくつくる提案書」から「バイヤーが動く提案書」ヘと変わります。
2-1.【課題発見】売場の「違和感」を見つける6P分析
すべての出発点は「現場」にあります。しかし、漫然と店舗を眺めるだけでは課題は見えません。6P分析を使うことで、多忙なバイヤーに代わり、売場の状態を抜け漏れなく把握できます。他の営業が見過ごしている小さな違和感や改善の種を、体系的に見つけることができます。なんとなく」の店舗調査を終わらせる。
6つの切り口で売場を見ることで、他の営業が見過ごしている「小さな違和感」や「改善の種」を体系的に発見します。
- Product(商品):品揃え、フェイス数、陳列の状態
- Price(価格):価格設定、競合との比較
- Place(場所):棚の位置、エンドや特設コーナーの有無
- Promotion(販売促進):POP、チラシ、試食などの販促活動
- People(スタッフ):売場担当者の理解度、作業負荷
- Performance(売上・業績):販売実績、在庫状況

店舗調査は、1店舗で実施するのではなく、同一チェーンの異なる店舗との比較、競合チェーンの店舗との比較を行うと、対象店舗の問題点がより明確になります。
店舗間の比較調査の具体的な手法はこちら
👉【詳細解説】ストコンとは?|店舗調査を提案の差別化に生かす方法
2-2.【仮説構築】見つけた「違和感」を、仮説に変える
6P分析で見つけた事実をそのまま並べても、提案にはなりません。「なぜそうなっているのか」を推測し、バイヤーと確認できる仮説の形に変えることで、提案に説得力が生まれます。
1.兆候の発見: 「在庫過多」「POPの汚れ」といった事実を書き出す。
2.構造の推定: 「なぜ在庫が多いのか?」「なぜPOPが汚れたままなのか?」と背景にあるメカニズムを推測する。
3.「問い」への変換: それを「〇〇が原因で、機会損失が起きているのではありませんか?」という、検証可能な「問い」の形にする。
このプロセスを経ることで、事実が提案の根拠に変わります。
2-3.【提案構成】仮説をストーリーにする「PREP法」
正しい仮説も、伝え方を間違えれば届きません。多忙なバイヤーや経営層は、結論が見えない説明を嫌います。PREP法を使うことで、提案を「結論から始まるストーリー」に組み立てることができます。
- Point(結論):我々が共に目指すべき「未来のゴール」をまず冒頭で力強く提示します。
- Reason(理由):なぜ今、それをやるべきなのか。その論理的な「根拠」と「大義名分」を提示します。
- Example(具体例):その未来を実現するための、具体的な「提案」と「証拠」をここで初めて見せるのです。
- Point(再提示結論):最後に改めて、ですので、我々はこの「未来のゴール」を目指すべきですと念を押します。
この型を使うことで、提案は『売り込み』から『一緒に考える対話』へと変わります。
商談で使える具体的なトーク術はこちら
👉 【商談特化】PREP法の使い方|1分でバイヤーを納得させる最強の伝え方
2-4. 【価値伝達】商品の価値を、バイヤーの言葉に翻訳する「FABE分析」
仮説をストーリーにしても、最後の商品説明が機能の羅列になると、提案の印象が一気に薄れます。FABE分析を使うことで、「この商品にはこんな機能があります」ではなく、「この商品でお客様にこんな変化が起きます」という言葉に変えることができます。

商品の特徴をバイヤーの言葉に変えることで、提案は「売り込み」ではなく「提案」として受け取られます。
「試食頼み」から脱却する技術はこちら
👉 FABE分析とは?|試食頼みから脱却し、営業に商品を語らせる方法
2-5.【振り返り】商談を「やりっぱなし」にしない
提案は出して終わりではありません。しかし多くの現場では、「売れた・売れなかった」の確認だけで終わってしまいます。成功も失敗も次の提案に活かすために、4つの問いで振り返る習慣をつくります。
- 【意図】 当初、期待したゴールは何だったか?
- 【結果】 実際に起きたことは、何か?
- 【原因】 そのギャップ(成功・失敗)は、なぜ生まれたか?
- 【行動】 では、明日からできる次の一手は、何か?
この4つの問いを繰り返すことで、商談の経験がチームの財産に変わります。
振り返りを部下の成長につなげる対話の方法はこちらで解説しています。
👉ラップアップとは?|確認の場を部下の「成長の場」へ変える方法
3.研修で「提案書」を完成させる実践型プログラム
私たちが提供する研修は、座学で終わりません。実際の商談を題材に、研修で学んだことを現場で使えるレベルまで落とし込みます。講師が伴走しながら、貴社の商品・得意先に向けた実際の提案書を完成させることをゴールにしています。
3-1.課題解決営業研修プログラム例(全6回)
ある食品メーカーで実施し、提案採用率が20%以上向上した事例をもとにしたプログラム例です。情報収集から提案書作成、提案実施とレビューまでを6回で完結させます。貴社のカテゴリーやご要望を踏まえ、プログラムは各社ごとに設計します。

プログラムの特徴
①実際の商談を題材にする:
- 架空のケーススタディではなく、受講者が現在担当している実際の商談案件を題材にします。研修の成果がそのまま明日の商談に直結します。
②講師による添削とフィードバック:
- 作成した提案書に対し、プロの視点で丁寧な添削を行います。「なんとなく」の理解で終わらせず、質の高い提案書に仕上げます。
③研修後も自分で動ける型を身につける:
- 提案書をつくるプロセスを体得することで、研修終了後も自らの力で課題を発見し提案できる営業担当者へと変わります。
バイヤーから相談される営業担当者を、一緒に育てましょう。
「提案の質を変えたい」「若手の育成に悩んでいる」そうお考えであれば、まずは現状をお聞かせください。
※ご相談いただいても弊社からの営業は一切いたしません。
※ ご相談いただいても弊社からの営業は一切いたしません。
「なぜ、うちの営業は変わらないのか」 その答えが、この一冊にあります。
得意先から相談される営業がどう育つのか。
その理論と実践を余すことなく書きました。いきなり相談はハードルが高いという方は、まずこちらからどうぞ。
このページで解説した内容の背景にある考え方と、具体的な実践方法をさらに深く学べます。
