
得意先から「相談される営業」と、そうでない営業は何が違うのでしょうか。
商品を紹介して終わる営業は、バイヤーに「また来たか」と思われます。しかし売場を語り、得意先のビジネスを一緒に考える営業は、バイヤーから「ちょうどよかった、相談したかった」と言われます。
その差は、センスや経験年数ではありません。得意先との関わり方に「戦略と仕組み」があるかどうかです。このページでは、得意先から相談される営業組織をつくるための考え方と実践を解説します。
商談力が弱い。提案を決めきれない。商品紹介で満足している。
こうした状況を変えたいという理想は、営業責任者の頭の中に必ずあります。「こういう営業をしてほしい」「得意先にこう関わってほしい」という像が、はっきりと見えている。
しかし現場は動かない。
それは営業担当者の能力の問題ではありません。あなたの理想が、現場が明日から使える「型」になっていないからです。
第1章 「相談される関係」は、得意先を選ぶことから始まる
どの得意先に力を入れるか。その判断を「売上の大きさ」だけで決めていませんか。
売上上位の得意先が、実は利益をほとんど残していないケースは珍しくありません。そして、売上は小さくても、こちらの提案を真剣に聞いてくれる得意先が埋もれているケースも同様です。
相談される営業組織をつくる第一歩は、「どこに力を入れるか」を感覚ではなく、明確な基準で選ぶことから始まります。
1-1. 売上の大きさより、残る利益を見る
リベートや協賛金、物流コストを差し引いた「ネット粗利」で見たとき、得意先の実態は大きく変わります。力を入れる先を選ぶ基準を、売上から利益に変えるだけで、営業リソースの使い方が根本から変わります。
まず値入(表面上の粗利)だけでなく、販促費や作業コスト(Cost to Serve)を引いた「ネット粗利(実質利益)」を直視し、力を入れるべき得意先を見極めることから始めましょう。

1-2. 力を入れる得意先を、2つの視点で選ぶ
どの得意先に力を入れるかは、「攻める先」と「守る先」で判断の基準が変わります。それぞれに合った見方で整理することで、営業リソースをどこに集中すべきかが明確になります。
パターンA:【シェア拡大(攻め)】のマトリクス
- 目的: 新規の得意先や新商品の浸透を狙いたい場合。
- 縦軸:ポテンシャル(売上拡大余地)
- 「(得意先の)カテゴリー売上 × 目標インストアシェア - 自社現状売上」で、「あといくら伸ばせるか」を見ます。
- 横軸:パートナーシップ(関係性の質)
- トップ面談が可能か? データ開示があるか?
- 狙い目:
- 売上規模は中堅でも、自社シェアが低く、拡大余地が大きい得意先こそに積極性の高い営業担当者を配置して得意先と新たな関係を構築しに行きます。

パターンB:【利益改善(守り・構造改革)】のマトリクス
- 目的: 売上はあるが利益が薄い、営業効率を改善したい場合。
- 縦軸:その得意先から得られるネット利益
- 営業利益率(販促費・物流費等の営業コストを引いた後の「ネット粗利」)。
- 横軸:戦略的適合性
- 自社の方針(高付加価値化など)と、相手の方向性が合致しているか?
- 狙い目:
- 「方向性は合致しているが、利益が出ていない先」に対しては、戦略的な関係見直しで利益構造を改善(販促費の適正化など)に挑みます。
- 逆に「利益も出ず、話も合わない先」に対しては、「撤退」や条件是正を検討する勇気が必要です。

「すべてのお客様を平等に扱う」ことは、戦略ではありません。 勝てる土俵を選び、リソースを集中させるための「選定基準」を、貴社は持っていますか?
1-3. 数字だけでなく、関係性の深さで見る
どれだけ良い提案を持っていても、関係性が浅い得意先には届きません。「名刺交換した程度」の相手に提案をしても、響かないのは当然です。得意先との関係をどう深めるかも、力を入れる先を選ぶ重要な判断基準になります。
ここで、得意先との関係性を「感情」ではなく、以下の「4段階のフェーズ」で客観的に評価します。
- 面識がある(知っている)
- 情報交換できる(話せる)
- 相談される(信頼されている)
- 影響力を行使できる(頼られている・パートナー)
この4段階をそれぞれの階層で現状どのレベルにあるか明らかにします。
例えば、大きな提案や上位層へのアプローチには、権限を持つ商品部長クラスと「レベル3(相談される)」以上の関係が必要です。現在の関係性からレベルを上げるために「何をすべきか」という具体的なアクションを想定することができます。

現在の関係性がどのフェーズにあるかを見誤った提案は「唐突な売り込み」として拒絶されます。
関係性を深化させるための科学的アプローチはこちら
👉【詳細解説】ザイアンスの法則|営業で「選ばれる人」になる、科学的な関係構築術
第2章 得意先との関係を、一人に頼らない組織でつくる
力を入れる得意先が決まっても、その関係を「担当営業ひとり」に任せていては、成果は限定的です。一人の営業担当者が異動や退職をした瞬間、積み上げてきた関係がリセットされる。そのリスクを抱えたまま、得意先から相談される営業組織はつくれません。
2-1. 担当者ひとりに頼る関係の危うさ
多くの企業では、メーカーの担当者と小売のバイヤーだけが繋がっている「蝶ネクタイ型」の関係が一般的です。しかしこの関係には、組織として見たときに見過ごせない課題があります。

- ブラックボックス化: 商談の経緯や「阿吽の呼吸」が担当者の頭の中にしかなく、組織に資産として残りません。
- リセットのリスク: 担当者が異動・退職した瞬間、積み上げた関係性がゼロに戻ります。
- 決定権の限界: 担当者レベルで合意しても、得意先の物流部や店舗運営部から「NO」が出れば、提案は覆ります。
「優秀な営業担当者に任せているから安心」という考えは、「その人がいなくなれば終わり」という脆弱さと背中合わせなのです。
2-2. 組織で複数の接点を持つことで、関係は安定する
担当者ひとりの関係から抜け出すには、複数の階層で得意先と接点を持つことが必要です。営業担当者を起点にしながら、上司や関連部署も得意先と繋がっている状態をつくることで、関係は個人ではなく組織の資産になります。

- 経営層・部長クラス:
- 年間の取り組み方針やビジョンを、上位層同士で直接話せる関係をつくる。これにより、現場の商談が「全社方針」として通りやすくなる。
- 現場担当者:
- バイヤーとの商談に加え、シニアバイヤーとのコミュニケーション強化を図るなど日常業務も含めた関係強化を続ける。
- 関連部署
- 「店舗巡回(ラウンダー)」や「販促担当者」とも連携し、互いの業務についての議論や現場の課題を吸い上げる。
この体制の最大のメリットは、「誰が異動しても、組織としての関係と取引が維持される」強固な基盤にあります。
- 関係性の「多重化」:
- たとえ現場担当者が変わっても、上司同士、あるいはサポート部隊同士が繋がっていれば、商売の継続性は保たれます。
- 「点」ではなく「面」で接しているため、一人の異動がビジネス全体を揺るがすことはありません。
- 組織としての「記憶」:
- 過去の経緯や成功事例が、組織間で共有されるため、新任担当者もスムーズに引き継ぐことができます。
とはいえ、いきなり全階層を繋ぐ必要はありません。 まずは『営業課長×シニアバイヤー』、あるいは『営業担当×販売促進部』など、「もう一本の線」を引くことから始めましょう。線が2本になるだけで、関係の安定度は劇的に増します。
2-3. 商品紹介だけの営業から、相談される営業へ
組織で得意先と複数の接点を持つようになると、営業担当者に求められる役割も変わります。商品を紹介して帰る営業から、得意先から相談される営業へ。その変化が、得意先との関係を根本から変えます。
- 商品紹介だけの営業:「今日も新商品を持って行ってきます。」
- 相談される営業:「この商談には上司を連れて行きます。得意先が今期の売場改革を考えているので、一緒に提案を組み立てたいのです。」
私たちは、組織として得意先と複数の接点を持つ体制をつくるだけでなく、その中心で動く『相談される営業』を育てることまでをセットで支援します。
第3章 得意先と一緒に描く、年間の取り組み計画
営業体制ができたら、次に向かうべき「地図」が必要です。多くの営業担当者が作る年間提案書は、新商品と特売のスケジュールを並べたものに過ぎません。得意先のビジネスをどう成長させるかを一緒に描いた計画があってはじめて、商談は「売り込み」から「計画の実行確認」に変わります。
3-1. 「点」の商談から「線」の取組へ
「来月の特売をどうするか」という目の前の議論だけでは、価格競争からは抜け出せません。3年後のゴールを得意先と合意し、そこから逆算した道筋を描くことで、日々の商談に意味が生まれます。
- Step 1(今期): 成功モデル(勝ちパターン)の構築。
- Step 2(来期): 他カテゴリーへの横展開。
- Step 3(将来): 物流を絡めたトータルコスト削減。

このロードマップがあることで、目の前のトラブルや担当変更があっても、プロジェクトはブレずに進み続けます。談は「売り込み」ではなく「計画の実行確認」へと変わり、商談の質は劇的に向上します。
3-2. 納品の数より、店頭で売れる絵を描く
年間計画を作る際、最も重要なのは「自社商品を何個納入するか」ではありません。「店頭で、消費者にどう買ってもらうか」を起点に考えることで、提案の中身が根本から変わります。
- 店頭から逆算する:
- 営業サポートから「A店で若年層の来客が増えている」というデータを受け取ったら、営業担当者は「では、若者向けの時短レシピPOPを棚帯に設置しよう」と、店頭で売れる具体的な施策を考えます。
- 競合店情報と商品価値を組み合わせる:
- 自らの足で集めた競合店情報と、商品の価値をお客様の言葉に置き換える力を組み合わせて、「店頭で商品が動く絵」を描き切る。
- データと事実から仮説を立てる:
- 「なんとなく」ではなく、商圏データや競合店調査に基づいた事実から仮説を導き出します。
- 「なんとなく」ではなく、商圏データや競合店調査に基づいた事実から仮説を導き出します。
- 3者の立場を満たす提案を考える:
- 経営層(利益)、バイヤー(売上)、現場(作業効率)。この3者全員にメリットがある提案になっているかを確認します。
3-3. 計画は、定期的に見直すことで活きる
どんなに良い計画も、実行されなければ意味がありません。市場環境は常に変化します。 だからこそ、計画書の中に最初から「四半期ごとの振り返りと見直し(ピボット会議)」を組み込みます。
- 単なる数字の報告会(進捗会議)ではありません。
- 「仮説は正しかったか?」「次の一手はどうするか?」を議論し、軌道修正を行う場です。

この「計画(P)→実行(D)→検証(C)→修正(A)」のサイクルを、得意先と一緒に回せる状態をつくること。それが、得意先から相談される関係への道筋です。
第4章 戦略を絵に描いた餅にしないために
ここまで、得意先から相談される営業組織をつくるための「選ぶ・つながる・描く」の3つを解説してきました。しかし多くの企業が、ここまでは描けても、実行の段階で壁にぶつかります。
4-1. 多くの組織が陥る「4つの実行の壁」
なぜ、計画は実行されないのか。現場では、人手不足だけでなく、得意先との優先順位のズレや環境の変化など、さまざまな要因が重なって実行の足を引っ張っています。
- リソースの壁(自社):
- 「日々の商談や事務処理に忙殺され、分析や資料作成に手が回らない」
- スキルの壁(自社):
- 「担当者に、売場を起点に考える発想がない」
- 「組織内で意識が統一されておらず、バラバラに動いている」
- 合意の壁(対・得意先):
- 「こちらの提案と、得意先の優先順位がズレている」
- 「目的が曖昧なまま進み、途中で梯子を外される」
- 変化の壁(環境):
- 「得意先の方針転換や、競合の予期せぬ動きに対応できず、計画が陳腐化する」
これらの壁は、現場の担当者個人の努力だけでは突破できません。
組織として、これらを乗り越えるための「仕組み」と「装備」を整える必要があります。
4-2. 解決策は「育成」と「支援」
私たちは、この壁を乗り越えるために、貴社の状況に合わせた2つのアプローチで支援します。
① 営業研修(人材育成):現場の「個の力」を高める
- 対象: 営業担当者、マネージャー
- 内容:
- 商品紹介だけの営業から脱却するための意識と行動の変革
- バイヤーが聞きたい提案をつくるための「型」の習得
- AIを活用した商談準備の効率化
【課題解決営業研修】の詳細はこちら
👉課題解決営業とは|バイヤーに選ばれる「提案の型」を現場に実装する
② 営業支援(実行サポート):不足する「リソース」を補う
- 対象: 営業企画部、マーケティング部
- 内容:
- 現場が商談や調整に集中できるよう、データ分析や提案書作成をプロフェッショナルが支援します。
- 単なる事務代行ではなく、戦略を理解した「営業サポート」としてチームに加わります。
【営業サポート】サービス詳細はこちら
👉 営業サポート支援|「事務処理」から「提案支援」へ
4-3.実行と定着
私たちは計画を作って終わりにはしません。 「計画倒れを防ぎ、確実に成果へ繋げるための振り返りと見直し(ピボット会議)」の定着まで伴走支援します。
- 予兆を見逃さない: 競合の動きやキーマンの異動など、計画が崩れる予兆を早期に発見し、対策を考えます。
- 定着支援: 売上だけでなくネット粗利(実質利益)を可視化し、経営層への報告をサポートします。
組織営業の体制づくり・人材育成・営業サポート。この3つが揃ったとき、得意先から相談される営業組織が生まれます。
第5章 得意先から相談される営業組織を、一緒につくりましょう
得意先を選び、組織でつながり、計画を描き、実行する。この4つのプロセスを自社だけで完結させることは容易ではありません。私たちは、食品業界200社以上の支援実績を持つ専門家として、貴社の状況に合わせてサポートします。
「私たちがお手伝いできること」
- 体制づくり:力を入れる得意先の選び方、組織で得意先とつながる仕組みの設計
- 人材育成:相談される営業を育てる研修、提案書添削
- 実行支援:データ分析、提案書作成プロセス構築
「何から始めればいいかわからない」
「自社の課題を整理したい」
そうお考えであれば、まずは現状をお聞かせください。得意先から相談される営業組織を、一緒につくりましょう。
まずは、貴社の営業組織の現状をお聞かせください。
得意先の選び方・組織体制・年間計画・実行。貴社の営業組織がどこで止まっているか、30分で一緒に整理します。
👉 「得意先から相談される営業組織づくり」無料相談に申し込む
このページの理論と実践を、体系的に学びたい方へ
得意先から相談される営業は、センスでも熱意でも生まれません。
「どの得意先を選ぶか」「組織としてどう関わるか」「どう提案し、どう実行するか」——その全プロセスを食品メーカー支援25年の実践から体系化した一冊です。
このページで解説した内容の背景にある考え方と、具体的な実践方法をさらに深く学べます。
