新連載「800字の仕事術」数字に強い営業になる 第5回「AAR(振り返り):その「でも」が、あなたの成長を止めている」をアップしました ! !  〜 第10回まで現場で使える「数字」のコツやヒントを解説します☝️

基礎用語の実践講座「FABE分析」

FABE分析とは?|試食頼みから脱却し、営業に商品を語らせる方法

「知っている」から「使える」へ

私たちのブログ『丸尾くんの挑戦』では、一人の若手営業担当者が、様々な壁にぶつかりながら成長していく姿を描いています。物語の中で、彼は多く理論やフレームワークを学びますが、いつも最初からうまくいくわけではありません。知識を「知っている」ことと、現場で「できる」ことの間には、大きな隔たりがあるからです。

この「基礎用語の実践講座」では、そんな丸尾くんが直面したような「実践の壁」の正体を、理論的に、そして深く掘り下げていくことを目的としています。まずは基本となる知識を。そして、その知識を真の力に変えるための「思考のヒント」を。あなたも丸尾くんのように、一歩先のステージへ進むための、大切な何かを見つけていただければ幸いです。

1.FABEシートは埋まったけれど・・・

「角井さん、ちょっといいですか?以前、角井さんに教えていただいたFABE分析、自分なりに新商品の『大吉』で作ってみたんです。でも…なんだかしっくりこないというか、自分で読んでみても『だから何?』って感じで…。これじゃ、とてもバイヤーには響かないと思うんです。」ある日の夕方、デスクワークをしていた丸尾くんは角井さんにFABE分析の進め方を質問しました。

「見せてくれる?…なるほどね。よくできているわよ、丸尾くん。Feature、Advantage、Benefit、Evidence、フレームワークの形は完璧。でも、『しっくりこない』と感じたその感覚、すごく大事よ。」角井さんはいつものように冷静に答えます。

「えっ、そうなんですか?僕の考えが浅いだけなのかと…。」

「ううん、違うわ。それは、多くの真面目な営業担当者がぶつかる、とても大きな壁なの。多くの人は、FABE分析を『埋める』ことが目的になってしまって、そのシートが『なぜ機能しないのか』という、もっと根深い問題に気づいていない。今日は、その本質について解説するわね。」

2.FABE分析とは?

商談における商品説明の質を飛躍的に高めるフレームワークとして、「FABE(ファブ)分析」があります。これは単に商品のスペックを羅列するのではなく、顧客にとっての真の価値を伝えるための、極めて強力な思考ツールです。

まずは、基本となる4つの要素についておさらいしましょう。

多くの企業やセミナーでは、「このフレームワークに沿って、商品の魅力を整理しましょう」と教えられます。そして、多くの営業担当者は、真面目にこのシートを埋めようと努力します。

しかし、です。 なぜ、完璧に埋めたはずのFABEシートが、商談の現場で空虚に響き、バイヤーの心を動かせないのでしょうか?

3.なぜ、あなたのFABE分析は機能しないのか?

結論から言えば、あなたのFABE分析が機能しない理由は、スキルや経験不足だけが原因ではありません。多くの場合、その根源には営業担当者が「知る由もない情報」を元に分析せざるを得ないという、組織的な「情報の非対称性」が横たわっているのです。

ボトルネック①:営業の手元に十分な量の情報がない

考えてみてください。あなたの会社の営業担当者は、自社のマーケティング部門や商品開発部門から、商談という戦場で戦い抜くための十分な「武器(情報)」を渡されているでしょうか?

おそらく、「イエス」と即答できる会社は多くないはずです。

多くの会社で、新商品の「特徴(Feature)」のまとめと、いくつかのアンケートやPOSデータなどの「証拠(Evidence)」の数ページの資料を共有されるだけになっていないでしょうか?

「新素材を採用しました!」、「新しい製法を取り入れました!」これらの情報は、確かに重要な「Feature」です。

「お客様の70%が新素材を評価しました!」
「新しい製法を用いた方が従来品より食感の評価が2割高いです!」

しかし、特徴が「なぜ、競合より優れているのか(Advantage)」を証明するための比較データや、「その結果、顧客にどんな利益がもたらされるのか(Benefit)」を深く洞察するための情報は、どこにあるのでしょうか?

そのほとんどは、マーケティング部門や商品企画部門のPCの中に眠っています。POSデータ、消費者アンケートの結果、競合のベンチマーク調査、開発段階の実験データ…。

これら、AdvantageとBenefitという「付加価値」を生み出すための、最も重要な「原材料」が、営業の知らないところでブラックボックス化されているのです。

例えば、あるメーカーでは、開発部門が「新しい乳化技術(Feature)」によって、分離しにくい新商品を開発しました。しかし、営業に共有されたのはその事実だけ。
実は、その乳化技術によって「常温での長期保存(Advantage)」が可能になり、「冷蔵スペースが限られる小規模店舗でも扱いやすい(Benefit)」という、流通に対する価値が伝えられていませんでした。結果、営業は新技術をうまく説明できず、新商品発売という大事な導入期に大きなチャンスを逃してしまったのです。

ボトルネック②:「配慮」という名の、情報の分断

では、なぜマーケティング部門や開発部門は、これらの重要な情報を営業に共有しないのでしょうか。

もちろん、悪意があるわけではありません。
むしろ、彼らの「配慮」が、皮肉にも情報の分断を生んでいるケースが多々あります。

「こんな専門的なデータを渡しても、営業は理解できないだろう」
「情報量が多すぎると、かえって営業が混乱するだろう」
「営業に不正確なことを言われると困るから、情報は我々で管理しよう」

こうした「善意の配慮」が、結果として営業担当者を「Featureしか語れない伝書鳩」にしてしまいます。

その結果、顧客にとって最も価値のある「Benefit」を語る機会を奪っているのです。

これでは、原材料がないのに、「最高の料理を作れ」と言われているようなものです。営業担当者が、自分も納得できるFABE分析を作れないのも当然です。

ボトルネック③:商品開発部・マーケティング部が商談現場を知らない

情報の分断は、実は営業に対する分断とは逆の方向でも生じています。

それは、商品開発・マーケティング部門が、営業の「戦場」を知らないという、もう一つの「情報の非対称性」です。

営業担当者からすると、「この程度の商品情報では、十分な商談ができない」と感じることがあるかもしれません。しかし、営業担当者の皆さんも胸に手を当てて考えてみてください。マーケティングや開発部門の同僚に、商談の「生々しい現実」を伝えているでしょうか?

バイヤーとはどの様な役割を担い、何を気にしているのか。
そもそも商談時間はどのくらいで、どんな情報が求められるのか。
競合メーカーは、どんな情報を提供しているのか。

こうした基本的な情報すら伝わっていないかもしれません。これでは、(目隠しをして実施する)スイカ割りのようなものです。

バイヤーが納得する商品説明資料を準備しろと言われても十分な対応が出来ないのも当然です。

こうしてみると、営業部門とマーケティング部門や開発部門との間に「相互の情報非対称性」が生じていることがわかります。まさに縦割りの弊害と言える事象が生じているのです。

これらが、営業担当者が自分でも納得するFABE分析の実施を難しくしている要因といえるでしょう。

4.解決への方向性と次のアクション

この根深い課題を解決するためには、営業担当者個人の努力だけでは限界があります。

必要なのは、部門の壁を越え、「顧客への価値提供」という一つのゴールに向かって、情報をスムーズに連携させる「仕組みづくり」です。

では、その第一歩として、何ができるのか? 一つの解決策を挙げます。

それは、「FABE分析を、マーケティング部門や開発部門に作ってもらう」という解決策です。彼らは、AdvantageとBenefitを導き出すための、全ての情報(原材料)を持っています。彼らがその情報を元に「公式のFABE分析シート」を作成し、営業部門に提供する。

これにより、全営業担当者が、同じ質の高いロジックで商談に臨むことが可能になります。これは、営業の属人性を排し、組織としての商品提案力を底上げする、効果的な一手です。

しかし、これだけで十分か?と問われれば、答えは「ノー」です。
FABEシートのつくり手を変えただけでは、真の連携は生まれません。ここからが、私たちの提案の核心です。

ここからは、私からの提案になります。

FABE分析という「共通言語」を持つことに加え、以下のような「共通体験」を組み合わせることで、部門間の壁は劇的に低くなります

  •  定期的な「商談同行」

マーケティング担当者や開発担当者が、四半期に一度でも良いので、営業の商談に同行する機会を設けます。現場の空気、バイヤーのリアルな反応、営業担当者の苦労を肌で感じる体験は、百の日報・週報を読むよりも価値があります。

  •  営業からの「フィードバック会」

営業部門が、商談で得た「バイヤーの生の声」や「競合の最新情報」を、マーケティング・開発部門に定期的にフィードバックする場を設けます。ここで重要なのは、「聞きっぱなし」にせず、そのフィードバックが次の商品開発や商品情報にどう活かされたかを、必ず営業部門にフィードバックすることです。

この双方向コミュニケーションが信頼関係を築きます。

5.相互理解を高めよう

丸尾くんは、角井さんの説明を聞いて少し明るい顔で答えます。

「なるほど…!僕が作れなかったのは、経験不足だけじゃなくて、そもそも『原材料』が手元になかったからなんですね。なんだか、霧が晴れた気分です!」

「その通りよ。そして、本当に優秀な営業は、ただ情報がないと嘆くのではなく、『こういう情報があれば、もっとお客様に価値を届けられる』と、関連部署に働きかけることができる人材よ。そのための共通言語として、FABE分析は非常に有効なの。」角井さんは丸尾くんの背中を押すように力強く語りかけます。

「まずは、マーケティング部に『大吉』の消費者調査データについて、詳しく教えてもらえないか聞いてみます!」スッキリとした丸尾くんは次のアクションが見えたようです。

「素晴らしい第一歩ね。そのように、組織を動かす視点を持つことが、君をただの営業担当者から、ビジネスを動かす人材へと成長させる。それと今日の話の前提となる、論理的な伝え方のフレームワーク『PREP法』については、こちらの記事で復習しておくといいわね。」

お知らせ

《より本質的な「営業の考え方」を学びたいあなたへ》

今回、解説した「FABE分析」は、提案の質を高めるための重要な「スキル」です。しかし、FABE分析を生かして営業活動の質を高めていくためには、その土台となるより本質的な「営業の考え方」を理解しておく必要があります。

  • なぜ、あなたの提案は響かないのか?
  • どうすれば、得意先はあなたを「パートナー」として見てくれるのか?

その全ての「答え」と「具体的なプロセス」を以下のページで体系的に解説しています。 ご興味があれば、ぜひご覧ください。

【実践ガイド】課題解決営業|バイヤーに選ばれる「提案の型」

【書籍案内】仕組みでメンバーを育てたいあなたへ

お知らせ

もし、あなたの会社でも「同じ様な事が起きている」と感じていて、「営業担当者の商品説明力を高めたい」から見直したい、「情報共有の見えないボトルネック」を明らかにしたいとお考えであれば、私たちがその実現をサポートいたします。