
あなたのPREP法は、なぜ商談で響かないのか?|「自分本位」から「相手本位」へ伝え方を劇的に変える思考法
「知っている」から「使える」へ
私たちのブログ『丸尾くんの挑戦』では、一人の若手営業担当者が、様々な壁にぶつかりながら成長していく姿を描いています。物語の中で、彼は多く理論やフレームワークを学びますが、いつも最初からうまくいくわけではありません。知識を「知っている」ことと、現場で「できる」ことの間には、大きな隔たりがあるからです。
この「基礎用語の実践講座」では、そんな丸尾くんが直面したような「実践の壁」の正体を、理論的に、そして深く掘り下げていくことを目的としています。まずは基本となる知識を。そして、その知識を真の力に変えるための「思考のヒント」を。あなたも丸尾くんのように、一歩先のステージへ進むための、大切な何かを見つけていただければ幸いです。
1.PREP法を使ってはみたものの・・・
「角井さん、今度の商談に向けて、PREP法で構成を考えてみたんです!これなら論理的で、分かりやすいですよね!」丸尾くんは自身を持って角井さんに資料を手渡した。
P(結論):「新商品『大吉』を導入すべきです!」
R(理由):「なぜなら、この商品は新しい包材を使っていて、調理時間が短いからです!」
E(具体例):「例えば、お客様アンケートでも70%が高評価でした!」
P(結論):「ですから、ぜひ『大吉』を導入してください!」
丸尾くんの資料を読んだ角井さんは険しい表情で、「…なるほどね、丸尾くん。構成は、確かにPREP法の『型』に完璧にハマっているわ。とても論理的よ。でも、正直に言うわね。このままじゃ、三角バイヤーの心は1ミリも動かない。」と丸尾くんの資料に対する評価を述べた。
丸尾くんは困惑気味に質問を返した「ええっ!?なんでですか?PREP法って、最強のフレームワークだって…」
「フレームワークは、あくまで料理でいう『お皿』よ。問題は、そのお皿に何を乗せるか。多くの人が、その『乗せるべき中身』を根本的に間違えているの。今日は、なぜ正しいPREP法が『響かない』のか、その本質的な理由を解説するわね。」
2.ビジネスで用いるPREP法とは? – 論理的な伝え方の「基本の型」
角井さんが指摘したように、PREP法は、ビジネスにおけるコミュニケーションの質を飛躍的に向上させる、非常に強力なフレームワークです。初めて聞く方のために、まずはその基本構造をおさらいしましょう。
PREPとは、以下の4つの要素の頭文字を取ったものです。

この「結論 → 理由 → 具体例 → 結論」という流れは、聞き手の思考を整理し、ストレスなく内容を理解させる上で、極めて効果的です。この「型」を身につけるだけでも、あなたの話は格段に分かりやすくなるでしょう。
しかし、多くの営業担当者が、この強力な「型」を手にしながらも、商談で成果を出せずにいます。それはなぜなのでしょうか。
3.なぜ、あなたのPREPは響かないのか?
正しい「型」を使っているのに、相手に響かない。
その原因は、PREP法そのものではなく、そのフレームワークに流し込んでいる「情報の中身」にあります。
結論から言えば、多くの提案でPREP法を用いてつくっているけどバイヤーに響かないのは、それが「私のための提案書」になっており、相手が本当に聞きたい「あなたのための提案書」になっていないからです。
ボトルネック①:Point(結論)が、相手の「聞きたいこと」ではない
多くの営業担当者は、冒頭の丸尾くんのように、Pointを「この新商品を採用してください」という「自分のお願い」にしてしまいます。しかし、多忙なバイヤーが聞きたいのは、あなたの都合ではありません。
彼らが聞きたい結論とは、「自社(得意先)が抱える課題を解決してくれる提案」です。
つまり、あなたが最初に述べるべきPointは例えば、「貴社の『若年層の客離れ』という課題は、この方法で解決できます」といった相手の課題に寄り添ったものであるべきなのです。
ボトルネック②:ReasonとExampleが、「商品の説明」で終わっている
Pointがズレていると、続くReasonとExampleも独りよがりになります。
- 響かないReason:「なぜなら、この商品は〇〇という素晴らしい特徴があるからです」
- 響かないExample:「例えば、こんなすごい技術データがあります」
これでは、ただの商品説明です。
バイヤーは「だから何?それがうちの店でどう売れるの?」としか思いません。
バイヤーが本当に聞きたいReasonとExampleは、「具体的な売り方」や「それによって得られる成果」です。
得意先は皆さんの商品を店頭に置きたいのではありません。来店されたお客様が手にとって、買って欲しいのです。そうしなければ彼らの売上・利益にはならないのです。
- 響くReason:「なぜなら、この商品をこういった売り方で展開すれば、貴社の売上は〇%アップが見込めるからです」
- 響くExample:「例えば、こちらが具体的な棚割り案と販促計画、そして販売シミュレーションです」
「なぜこの商品なのか」「なぜ今なのか」だけでなく、「どこの売場で、どう売り、どう儲かるのか」。この問いに答えて初めて、あなたの提案は、ただの商品説明から、バイヤーが時間を割いて聞く価値のある「ビジネス提案」へと変わるのです。

4.相手の「期待」を組み込んだ、真のPREP法へ
では、どうすればPREP法を「響く」ものへと進化させられるのか。その答えは、提案の出発点を「自分」から「相手」へと完全に切り替えることです。

解決策:PREPの「中身」を、「相手が知りたいこと」で再構築する
「私のための提案」から「あなたのための提案」へ。
真のPREP法は、以下の要素で構成されます。

このように、フレームワークの全ての要素を「相手の期待」で満たして初めて、PREP法は、あなたの想いを一方的に伝えるツールから、相手の心を動かし、行動を促すための、最強のコミュニケーションツールへと進化するのです。
【角井さんが作成した「ハッピーチェーン向け・大吉PREP」の具体例】
ここで、角井さんが「ハッピーチェーンの三角バイヤー」のためだけに作成した、真のPREP法の具体例を見てみましょう。

5.必ず、得意先のためのPREPを作ること!
丸尾くんは驚いた表情で「……すごい……。角井さん、これが『あなたのためのPREP…!』僕が作ったものとは、次元が違います…。ハッピーチェーンの課題、競合の動き、具体的な数字…どこにも隙がない。完璧です!」と驚きの表情で感想を伝えました。
続けて「角井さん!この提案書を、僕の担当先のサンライズチェーンにも、このまま使わせてもらえませんか!?これなら絶対に採用されます!」と勢いよくお願いします。
角井さんは深いため息とともに「…丸尾くん。今の発言、私が今日一番伝えたかったことから、最も遠い発言よ。」
「えっ…?」先程までの勢いを失った丸尾くんは丸い目をして角井さんを見ています。
「私がさっき、なんて説明したか覚えてる?PREPは『相手のために』作るものだって言ったでしょう?これは、私が『ハッピーチェーンの三角バイヤー』という、たった一人の相手のことだけを考えて作った手紙なの。それを、全く別の相手である『サンライズチェーンのバイヤーさん』に渡して、心が動くと思う?」と相変わらず冷静に伝える角井さん。
「…それは…たしかに…。」
「知らない人宛の手紙を渡されても、困惑するだけでしょ?サンライズチェーンの売場の課題、客層、そして担当バイヤーの性格。それを一番知っているのは、担当である丸尾くん、あなた自身なの。だから、担当者が、自分の頭で、自分の得意先のためだけにPREPを作らないと、それは『真のPREP』には絶対にならないの。」
「……。」
角井さんは続けて諭します「もちろん、色々な人の提案書を見て学ぶことはとても大事。良い事例はどんどん参考にすればいいわ。
でも、相手のことを徹底的に考え抜き、最後は必ず、自分の言葉で、自分の得意先のためだけの提案書に落とし込む。そのプロセスをサボってしまったら、それはもう営業じゃない。AIに代替されるだけの、ただの作業になってしまうのよ。
どの得意先にも通じる、魔法のような完璧な答えなんて、この世界には存在しないのよ。」
「…すみません。僕、楽をしようとして答えを欲しがっていました…。もう一度、今度はサンライズチェーンのバイヤーさんの顔を思い浮かべながら、僕自身の手で、提案書を作り直してみます!」丸尾くんは先程の自分の発言の恥ずかしさに気づきながら答えます。
「ええ、その意気よ。その『相手視点』こそが、全てのビジネスの基本だから。

今日の話の前提となる、顧客の本当の価値(ベネフィット)を考えるための『FABE分析』については、こちらの記事で復習しておくと、さらに提案の質が上がるはずよ。」
《より本質的な「営業の考え方」を学びたいあなたへ》
今回、解説した「PREP法」は、提案の質を高めるための重要な「スキル」です。しかし、PREP法を生かして得意先が納得する提案を実現するためには、その土台となるより本質的な「営業の考え方」を理解しておく必要があります。
- なぜ、あなたの提案は響かないのか?
- どうすれば、得意先はあなたを「パートナー」として見てくれるのか?
その全ての「答え」と「具体的なプロセス」を以下のページで体系的に解説しています。 ご興味があれば、ぜひご覧ください。
もし、あなたの会社も「主語が自分たちの『お願い提案』が目立っている」と感じていて、「顧客視点の提案プロセス」を仕組みとして定着させたいとお考えであれば、私たちがその実現をサポートいたします。
