
たとえ期待した結果が得られなくても、その経験から学びを得ていますか?
ハトー屋へのプレゼンテーションから1週間ほどが経った。結果を待つ間は、何とも落ち着かない日々を過ごしていた。
特に丸尾くんはプレゼンが終わったことで張り詰めていた緊張の糸が切れ燃え尽き症候群気味の様子。
仕事に集中しようとする自分と、つい気が緩んでしまう自分が頭の中で同居している感じだった。幸い、大きな失敗には繋がっていないが気を引き締めなければと思いながらも、なかなか気持ちが乗らないでいた。
事務所でデスクに向かっていると角井さんが声をかけてくれた。
「丸尾くん、この間のハトー屋さんのプレゼンどうだった? 手応えはあった?」
丸尾くんは、質疑応答での川崎部長や山葉バイヤーの反応について説明した。川崎部長の予想外の評価や山葉バイヤーからの具体的な質問、そして伊藤部長や藤原課長、三国食品の元口部長や鈴木さんが喜んでくれた様子などを話した。
角井さんは、丸尾くんの話をじっと聞いていた。そして言った。
「…そう。結果がどうなるかは分からないけれど、丸尾くんが今回のプロジェクトに関わってこれだけ大変な経験を積めたこと自体が、あなたにとって、そして会社にとっても非常に貴重な財産になるはずよ。この経験は必ず次に繋がるわ」
「貴重な経験…」
ハトー屋との取引で前任者の佐藤さんが抱えていた問題、山葉バイヤーとの関係構築の難しさ、アカウントマネジメントという新しい考え方、情報収集やヒアリング、チームでのプラン作り、そして上層部も巻き込んだプレゼン…。確かに、この短期間で異動前には想像もできなかったような様々な業務と困難に直面してきた。
大変な対応だったが、その過程で多くのことを学び自分自身も成長できたという実感がある。丸尾くんは、「はい。本当に、今回の件に関われて良かったと思っています」と正直に答えた。

「本当ですか!?」受話器の向こうから届いた最高の吉報
その日の午後、事務所に戻ると三国食品の鈴木さんから電話が掛かってきた。
「丸尾さん、三国食品の鈴木です。先日のプレゼンの件ハトー屋さんから返事がありました」
丸尾くんは、心臓がドキリと鳴った。ついに結果が分かる時だ。
鈴木さんは落ち着いた声で結果を伝えてくれた。
「今回の改装店舗の事前調査と事後評価の定型化プランですが、今年と来年の改装予定の店舗から各3店舗、合計6店舗でテストとして実施させて欲しいとのことです!」
「え…、本当ですか!?」
丸尾くんは思わず大きな声を出してしまった。受話器を握りしめたまま、彼の脳裏にこれまでの戦いの日々が駆け巡る。厳しい表情で覚悟を語った伊藤部長。冷静なフォローで支えてくれた藤原課長。いつも的確なアドバイスをくれた角井さん。そして、最高のパスを出してくれた鈴木さん…。
提案が採用された! しかも、合計6店舗という具体的な数字で!

「はい。上手くいくようであればこの取組を他のカテゴリーにも広げて、それぞれのメーカーさんにも打診していきたいという意向を持っていると伺っています」
鈴木さんは、ハトー屋側がこの提案にどれだけ期待しているかを教えてくれた。
「鈴木さん…! 本当にありがとうございます!」
「いえいえ。お疲れ様でした。今回のプレゼンは、丸尾さんの熱意が本当に伝わった素晴らしいプレゼンだったと思います」
鈴木さんは、丸尾くんを労ってくれた。
「ここからがスタートです。良い取り組みに出来るように私たちとしても一緒に協力させてください」
鈴木さんの温かい言葉に丸尾くんは目頭が熱くなった。
今回のプロジェクトは、自分一人では決して成し遂げられなかった。伊藤部長や藤原課長、角井さんといった社内のメンバー。そして、三国食品の鈴木さんと元口部長。多くの人を巻き込み、多くの人の協力があって、自分の業務が進んでいることを、丸尾くんは改めて感じた。
ハトー屋との信頼回復への道はまだ始まったばかりだ。しかし、今回の提案採用はその確かな第一歩となった。丸尾くんは、この成功体験と支えてくれた人々への感謝を胸に次のステップへと進む決意を固めた。
《この物語の学びを、貴社の力に》
提案が採用された瞬間、丸尾くんが感じたのは自分一人の力ではないという事実でした。上司、先輩、卸担当者。多くの人を巻き込み、協力を引き出す力こそが組織営業の本質です。貴社の営業チームは、一人の成功をチームの財産にできていますか。
丸尾くんと一緒に、もっと深く学びたいあなたへ
この物語の続きは、書籍でお楽しみいただけます。
引き継ぎトラブル、バイヤーとの関係再構築、組織を動かす卸連携、そして上層部を巻き込んだトッププレゼン。丸尾くんが担当した本部で直面したリアルな壁とチームで乗り越えるプロセスを、物語を通じて体系的に学べる一冊です。
アカウントマネジメントの考え方と実践プロセスが、現場で即活かせる形で凝縮されています。
次回予告
プロジェクト堅牢盤石のプレゼンで得られた貴重な経験を、会社全体の力に変える!
伊藤部長からの新たな指示とは?、角井さんと共に、未来の丸閥食品の営業の礎を築けるのか?
