
POSデータがなくても懸念の仮説は立てられる
第4話では、提案の目標数字を「1日1店舗あたり6日に1個」という売場でイメージしやすい単位に分解し、PREPの「E(具体例)」の解像度を上げる方法についてお話しました。
ここから、第2部「反論を予測し、『決めの1枚』を創り出す」に入ります。
提案が「6日に1個」というレベルまで具体的になればなるほど、バイヤーがその提案のどこに引っかかるのかも具体的に考えられるようになります。
だからこそ、ここからは、
バイヤーは、この提案のどこでためらうだろうか?
を商談前に予測することが重要になります。
しかし、ここで多くの営業担当者が1つの壁に突き当たります。
うちには、大手メーカーのように活用できる詳細なPOSデータがない。得意先の課題や不採用の理由を事前に予測するのは無理だ。
確かに、詳細なPOSデータがなければ、精度の高い仮説を立てるのに限界はあります。
しかし、POSデータがなければ反論を予測できないわけではありません。
提案の解像度が上げているからこそ、日頃から営業担当者の周りにある現場情報が、バイヤーの懸念を予測する材料になります。
大切なのは、「バイヤーの懸念を正確に言い当てよう」とすることではありません。
商談前に現場情報を集め、バイヤーがためらう理由の仮説を持っておくことです。
売場・商談での会話・卸から情報を集める
まずは、得意先や競合チェーンの売場を観察します。
なぜ、このチェーンでは、あの商品がこの位置に置かれているのか?
競合チェーンでは、なぜ、あの商品をエンドで展開しているのか?
棚の位置やフェース数、SKUの数、販促物の使われ方などを実際に見ることで、得意先が売場で何を重視しているのかを考えるヒントが得られます。
そして、「1店舗あたり6日に1個」を目指す今回の提案に対して、バイヤーが売場のどこに不安を感じるを類推します。
さらに重要なのが、これまでの商談でバイヤーが口にした「生の声」や指摘です。
最近、上からSKUを減らすように厳しく言われているんだよね。
パート従業員のオペレーションが回っていなくて、売場を維持するのが大変なんだよ。
こうした何気ない一言には、バイヤーが現在置かれている状況や、優先している課題が表れています。
「SKUを減らすように言われている」のであれば、新商品を導入するために何かを外す必要があるかもしれません。
「売場のオペレーションが回っていない」のであれば、販売プランを実行する手間が採用の障害になる可能性があります。
こうした発言が、「1店舗あたり6日に1個」を目指す販売プランを受け入れる際の反論や障害を予測する材料になります。
また、普段一緒に仕事をしている卸の担当者に、
最近、あのバイヤーは、どのようなことに頭を悩ませていますか?
と率直に聞いてみるのも有効です。
卸の担当者は、メーカーには見えにくい得意先の事情や、他の商談でバイヤーが話していたことを知っている場合があります。
現場情報を反論予測につなげる
POSデータがないという限界を、必要以上に嘆くことはありません。
もちろん、売場観察や会話だけで、POSデータの代わりになるわけではありません。しかし、データが揃うまで何も考えられないわけでもありません。
PREPで提案の解像度を上げたうえで、次の情報を拾い集めます。
- 得意先や競合チェーンの売場で観察したこと
- 商談でバイヤーが口にした言葉や指摘
- 卸の担当者から得られた得意先の情報
こうした現場情報と今回の提案を突き合わせ、
この提案を受け入れるとき、バイヤーにとって最大の障害は何だろうか?
と考えます。
この段階では、正解を出す必要はありません。商談前に反論の仮説を持っておくことが大切です。
現場情報からバイヤーの懸念を類推する。この積み重ねが、次のステップとなる「具体的な反論の予測」の精度を高める土台になります。
次回予告
提案書作成術 第6回:時間がない営業のための『商談の障害』特定法
現場から情報を集めても、複数の得意先を担当する中で、1社の商談準備に多くの時間をかけることはできません。
次回は、集めた情報を4つの視点で整理し、バイヤーが口にしそうな反論の中から、今回の商談における「最大の障害」を短時間で絞り込む方法についてお話しします。