
大きな目標数字だけでは実現可能性が伝わらない
第3話では、PREPの骨子に沿って手元の資料を見直し、商談のストーリーに直接つながらないスライドを本編から引き算する方法についてお話ししました。
必要最小限のスライドを使って商談を組み立てる際、次に手をつけるべきは、PREPの「E(具体例)」に盛り込む数字の解像度を上げることです。
バイヤーに提案を受け入れてもらうためには、「売上が増える」という定量的なメリットを示す必要があります。
しかし、提案書に、
この企画でカテゴリー売上105%、プラス15万円を目指します。
とだけ書かれていても、バイヤーには、その実現可能性が伝わりません。
大きな目標数字をそのまま提示されると、バイヤーの頭には「本当にそんなに売れるのか?」という疑問が浮かびます。
そこで、私たちはその大きな数字を、バイヤーが毎日管理している売場と同じ単位に分解して見せる必要があります。
売上目標を「1日1店舗」の数字に分解する
例えば、対象期間における現在のカテゴリー売上が300万円で、この企画によって5%、金額にして15万円の上積みを目指すとします。
導入店舗数は100店舗、展開期間は30日間、商品の売価は300円です。
まず、目標金額15万円を商品の売価300円で割り、必要な販売数量を算出します。
目標販売数量
150,000円 ÷ 300円 = 500個
次に、この500個を「100店舗 × 30日間」で割ってみます。
1日1店舗あたりの必要販売数量
500個 ÷ 3,000店・日
= 約0.17個/店・日
必要な販売数量は、1日1店舗あたり約0.17個です。
これは、更にわかりやすく言い換えると「6日に1個売れれば達成できる目標」となります。
「プラス15万円」だけでは大きく感じた目標も、「1店舗あたり6日に1個」と捉えることで、売場での実現イメージを持ちやすくなります。
分解した数字を売場の実施プランにつなげる
提案書には、分解した数字を具体的な実施プランとともに示します。
「バイヤー、今回の企画で必要なのは、1店舗あたり『6日に1個』の販売です。
この売場展開であれば、十分に実現可能だと思いませんか?」
「6日に1個」という具体的な現場の数字に変換することで、バイヤーは「それならレジ前のカゴに並べるだけでクリアできそうだ」と、その目標を売場と結びつけて考えられるようになります。
ただし、数字を小さく見せることが目的ではありません。
大切なのは、提案する売場や販促施策によって、本当に「6日に1個」を実現できるのかを示すことです。売場での展開方法や販促施策とセットになって初めて、分解した数字が提案の根拠になります。
大きな目標を売場の単位に分解することで、提案の実現可能性そのものが高まるわけではありません。バイヤーが実現までの道筋を具体的に検討しやすくなり、提案の納得感が高まるのです。
ここまでのステップを整理すると、次のようになります。
- 「3つのなぜ」で、得意先が採用する理由をPREPの骨子に組み込む(第2話)
- PREPの骨子に直接つながらないスライドを、本編から引き算する(第3話)
- 販売目標を「1日1店舗」の数字に分解し、具体例の解像度を上げる(第4話)
これで、最初にバイヤーへ提示する「基本の提案(PREP)」が完成しました。
提案の解像度が上がるほど、
この提案に対して、バイヤーはどこに懸念を持つだろうか?
という反論も、具体的に予測できるようになります。
基本の提案をしっかり組み立て、自分たちの商談の型を次のステップへ進めていきましょう。
次回予告
提案書作成術 第5回:POSデータなしでバイヤーの『懸念』を見抜く方法
ここまでで「基本の提案(PREP)」が整いました。次回から「反論を予測し、『決めの1枚』を創り出す」パートに入ります。
まずは、PREPを提示したときにバイヤーから返ってくる反論の予測精度を高めるために、売場観察や商談での会話、卸の担当者から得られる一次情報の集め方についてお話しします。