
「AIを上手に使いこなすには、正しいプロンプトを書けないといけないのでは」と思っている営業担当者は多い。しかしそれは誤解だ。
プロンプトとは、AIへの話しかけ方のことだ。特別な言語でも、決まった形式でもない。
相手に伝わるように言葉を選ぶ。それだけのことだ。
バイヤーとの商談を思い出してほしい。
初めて会うバイヤーに対して、いきなり核心を突いた質問はしない。
まず相手の状況を確認する。言葉を選びながら、相手が同じ視点に立てているかを確かめる。
話が噛み合わなければ、言い方を変える。相手の反応を見ながら、少しずつ対話を深めていく。
AIとの対話もこれと全く同じことをすればいい。
AIには五感がない。だからこそ、言葉に背景を込める。
ただし、AIには五感がない。商談の場で伝わる表情や声のトーン、空気などはまったく伝わらない。与えられた言葉だけが全ての情報。それがAIだ。
だからこそ人との対話以上に、背景・目的・状況を丁寧に伝える必要がある。
「提案書を作って」ではなく「来週のバイヤー商談で新カテゴリーの導入を提案したい。バイヤーは今期コスト削減を最優先にしている。この状況でどんな切り口が有効か」と伝える。
情報が増えるほど、AIの返答の質は上がる。
そしてもう一つ、重要なことがある。AIが返してきた答えが正しいかどうかを判断できるのは、あなたの知見だけだ。
AIは自信を持って間違える。
当然ながら、業界の文脈も、バイヤーとの関係性も、過去の商談の経緯も全く知らない。
あなたの経験と知識だけがフィルターになる。
AIとの対話は、あなたの知見があって初めて機能するのである。
プロンプトの技術より、あなた自身の経験の方がずっと重要だ。
営業担当者がAIを使いこなすために必要なのは、プログラミングの知識でも特別なスキルでもない。
バイヤーと対話してきた、その経験そのものだ。
次回予告
営業×AI 第3話【本音の読み方】得意先の本音は、お金の動きに隠れている。
バイヤーは本音をそのまま言わない。経営者も同じだ。得意先の決算資料をAIで読み込むと、言葉の変化とお金の動きの乖離が見えてくる。そこに本音が隠れている。次回はその具体的な方法を書いていく。