
得意先のバイヤーは商談の場では本音をそのまま言わないことが多い。
得意先の経営者も同じだ。
「LTV(ライフタイムバリュー)を高める」
「DXに積極的に投資して今後、生産性を上げる」
得意先の決算説明資料や中期経営計画には、こうした言葉が並んでいる。
あなたは、この言葉を額面通りに受け取っていないだろうか。
言葉は経営の意図を伝えるが、同時に隠すこともある。
経営者の本音はお金の動きに表れる。
言葉とお金の動きを照らし合わせて初めて、得意先の本当の優先課題が見えてくる。
決算資料をAIで読み込むと、言葉の変化が見えてくる。
AIを使うと、この作業が格段に深くなる。
決算説明資料5年分をAIに読み込ませてみる。
決算説明資料5年分をAIに読み込ませてみる。決算説明書を時系列に分析して、以下の3つを問いかける。
- 最近、出現回数が減ったキーワードは何か
- 逆に、最近出てきたキーワードは何か
- 5年間出続けているキーワードは何か
これらの問いへの答えから、得意先のテーマの変遷を理解することができる。
言葉の変化は、経営の優先順位の変化だ。
3年前まで強調していた「店舗拡大」という言葉が消え、「既存店の収益改善」という言葉が増えていれば、成長戦略が転換していることがわかる。その転換を理解した上で営業活動をするのと、しないのとでは、バイヤーへの刺さり方が全く違う。
同じ提案書でも、得意先の文脈に合った言葉で語られているかどうかで、受け取られ方は大きく変わる。
さらにキャッシュフロー計算書を合わせて読み込ませると、言葉とお金の動きの乖離が見えてくる。
例えば、「成長投資を続ける」と言いながら設備投資(投資キャッシュフロ―)が減額してきている。
このように、言葉ではなくお金の動きを見る。そこに本音が隠れている。
経営者が株価を意識しているかどうかは、配当政策に最もよく表れる。増配を続けている会社と、内部留保を積み上げている会社では、経営の優先順位が全く異なる。
AIはこうした人間が読み落としがちな因果関係も丁寧に整理してくれる。
得意先の言葉とお金の動きを照らし合わせたとき、初めてバイヤーの優先課題の背景が見えてくる。
バイヤーが言葉にしていない本音を理解した提案は、「うちのことをわかっている」という信頼につながる。
その信頼の積み重ねが、いつか「相談したい営業担当者」という評価になる。
次回予告
資料のクオリティが高くても、話す順番を間違えると伝わらない。自分一人でシナリオを作ると、どうしても自社視点の論理になりがちだ。次回は、AIを使って提案シナリオの精度を上げる具体的な方法を書いていく。