
提案書作成は「骨子づくり」から始める
第1話では、本部から支給された「カタログ型提案書」をそのまま読み上げるだけの営業から脱却し、短い時間でバイヤーの納得を得る「商談力(伝える力)」を磨く第一歩についてお話ししました。
では、10〜15分という限られた商談時間の中で、手元の提案書をどのように整理していけばよいのでしょうか。その出発点となるのが、提案の骨子を「PREP(主張・理由・具体例・結論)」の型で組み立てるセルフチェックです。
今回の商談に合わせて提案書を組み立てるためには、まず「何を伝えるのか」という骨子が必要です。PREPで提案の骨子を明確にすることで、提案書全体を一つのストーリーとして組み立てやすくなります。
PREPは話し方だけのテクニックではない
結論から簡潔に伝えるPREPは、営業の基本として知られています。それなのに、なぜ現場ではうまく機能しないのでしょうか。
私がこれまで3,000部以上の提案書を添削してきた中で、特に多かったのが『主語がメーカーのままの提案書』です。
新商品のこだわりをいくらPREPに当てはめても、それだけでは「きれいに整理された売り込み」にすぎません。メーカーが伝えたいことを分かりやすく並べただけで、バイヤーにとって響く部分がなければ、提案は他人事のままです。
PREPの本質は、その場のトークをうまく整えるためだけの話し方のテクニックではありません。商談の前にバイヤーの反応を予測し、提案書の論理を整えるための「セルフチェック(事前点検)の型」でもあります。
「R」の理由が得意先側にあるかを点検する
では、提案書の骨子が本当に伝わるものになっているか、どうやって点検すればいいのでしょうか。
最も重要な点検項目は、PREPの「R(理由)」が、得意先側の事情を起点に組み立てられているかどうかです。
多くの提案書では、
「自社の新商品がいかに優れているか」
「開発にどれだけ力を入れたか」
といったメーカー側の事情が、提案の理由になっています。
これではバイヤーに響きません。
ここでいう「主語をバイヤーに変える」とは、単に文章の主語を「貴社」に書き換えることではありません。
メーカーが伝えたいことではなく、得意先がこの商品を採用する理由から、提案を組み立てるということです。
「3つのなぜ」で提案の抜けや漏れを確認する
得意先側の理由になっているかを確認するために、相手の頭の中にある「3つのなぜ」を点検します。
- なぜ、この商品なのか?(競合商品ではなく、これを選ぶべき理由は何か)
- なぜ、この時期なのか?(次の棚替えや、今の売場に必要な理由は何か)
- なぜ、うちの店なのか?(他チェーンではなく、得意先の客層にどう合うのか)
この「3つのなぜ」に対する答えを、PREPの骨子に具体的な言葉で組み込みます。「3つのなぜ」すべてをRの一文に詰め込む必要はありません。Rを中心に、PREP全体で答えられているかを点検することが大切です。
バイヤー目線のPREPに組み替える
例えば、提案の骨子を次のように組み立てます。
P(主張)
新商品〇〇の導入をご提案します。
R(理由)
貴社では、××客層の需要が高まっている一方、その客層に対応した商品が不足しています。次回の棚替えに合わせて新商品〇〇を導入することで、この需要を取り込み、カテゴリー売上の維持・向上につなげられると考えたためです。
E(具体例)
具体的な販売計画と、売場での展開イメージは以下のとおりです。
P(再主張・結論)
以上の理由から、この導入プランをご提案します。
ポイントは、商品の優秀さを理由にするのではなく、得意先の客層や売場の状況を起点に提案を組み立てることです。商品は提案の主役ですが、採用する理由は得意先側にあります。
PREPセルフチェックが反論予測の土台になる
商談前に、提案書の骨子に「3つのなぜ」への答えが入っているかをセルフチェックしておく。この準備によって、本番で慌てにくくなります。
提案書を読み上げることに追われず、顔を上げてバイヤーの反応を見ながら、対話を進める余裕も生まれます。
さらに、提案の骨子が明確になると、
「この理由を伝えたら、バイヤーはどこに疑問を持つだろうか」
「どの部分に反論が返ってくるだろうか」
と、バイヤーの反応を具体的に予測できるようになります。
まずは、提案の起点をメーカーからバイヤーへと移し、PREPでロジックを点検する。
そこから、自分たちの商談の型をつくっていきましょう。
次回予告(※次回は8月16日に更新します)
提案書作成術 第3回:PREPに沿って不要なスライドを引き算する
PREPで提案の骨子が整ったら、次はその骨子をもとに、手元の提案書を見直す番です。
次回は、PREPのシナリオに直接つながらないスライドを思い切って「引き算」するための、具体的な仕分けのルールについてお話しします。