提案書作成術 第7回 「なぜそう言うのか?バイヤーの反論を”要因分析”する技術」 アップしました。

提案書作成術 第8話 口頭説明だけではNG?提案の障害をメリットに変える「決めの1枚」

解決策を口頭説明だけで終わらせない

第7話では、バイヤーの「実績がないから不安だ」という反論に対し、その背景にある要因を仮説として分析する方法についてお話ししました。

例えば、次のような要因です。

  • 売れる確証のない商品を導入し、売上が下がるリスクを避けたい
  • 他社からも似た新商品を提案され、どれを優先すべきか迷っている

こうして反論の背景にある要因を分析したら、いよいよ本連載の核となる、商談の切り札「決めの1枚」を仕上げます。

ここで、多くの営業現場を見てきた中で感じる落とし穴があります。それは、せっかく考えた解決策を、商談での「口頭のアドリブ」だけで説明してしまうことです。

場数を踏んできたベテランの営業担当者ほど、この落とし穴にはまりがちです。引き出しが多いため、バイヤーから「まだ販売実績がないよね」と指摘されても、その場のアドリブで説明し、採用につなげることができます。

しかし、経験の浅い営業担当者が、同じようにアドリブで対応するのは簡単ではありません。

さらに、どれほど口頭での説明が優れていても、その内容が提案書に書かれていなければ、商談後に資料として残りません。

「決めの1枚」がバイヤーの社内説明を助ける

商談後、バイヤーは上司や関係部署に、商品の採用理由を説明しなければならない場合があります。

バイヤーが上司から、

販売実績のない商品を、なぜ導入するのか?

と聞かれたとき、手元に残された資料が商品情報を並べただけの「カタログ型提案書」だったら、どうでしょうか。

バイヤーが、営業担当者の口頭説明をそのまま再現することは困難です。

だからこそ、予測した反論に対する解決策を、口頭説明だけで終わらせてはいけません。

バイヤーが社内で採用理由を説明するときにも使えるように、提案書の中に「決めの1枚」として言葉にしておきます。

「決めの1枚」とは、単に見栄えのよいスライドではありません。

バイヤーが抱くと予測した懸念に対し、その解決策と得意先のメリットを1枚で示すスライドです。

提案の障害を「採用するメリット」に言い換える

「決めの1枚」を作るときに必要なのが、予測した障害と、その背景にある要因を、得意先の「メリット」に言い換えることです。

ここでいうメリットとは、バイヤーが社内で説明できる「採用理由」でもあります。

例えば、第7話で取り上げた要因Aの「売上の下振れを避け、手堅く数字を維持したい」に対する解決策を、次のようなスライドにまとめます。

「決めの1枚」の例

低回転商品との差し替えによるカテゴリー売上改善のご提案

現状の課題
直近でカテゴリー売上が伸び悩んでおり、販売実績のない新商品を導入して、売上が下がるリスクは避けたい。

解決のロジック
現在の低回転商品1品を今回の新商品に差し替え、売場展開と販促施策を組み合わせます。

得意先のメリット
1店舗あたり「6日に1個」の販売を目標とする無理のないプランにより、カテゴリー売上の上積みを目指します。

このように、

販売実績がなく、売れ残るかもしれない

という障害に対して、

低回転商品との差し替えと、実行可能な販売計画によって、カテゴリー売上の上積みを目指す

という採用理由へと言い換えます。

ただし、「6日に1個」という数字を示すだけでは不十分です。

なぜ、その売場展開や販促施策によって「6日に1個」を販売できると考えるのか。その根拠も併せて示す必要があります。

また、既存商品との差し替えによる売上効果を示す場合は、新商品の売上だけでなく、差し替える商品の現在の売上を差し引いて考えることも欠かせません。

「確実に売上が上がる」と断定するのではなく、具体的な目標と実施プランを示し、バイヤーが実現可能性を判断できるスライドにすることが大切です。

要因分析から導き出したバイヤーのメリットを、提案書に明確に書き出す。

それによって、バイヤーは商談後も、採用する理由を社内で説明しやすくなります。

そして、ベテランが経験の中で身につけたアドリブ力を、「決めの1枚」という再現可能な形で組織に蓄積できるようになります。

口頭説明だけに頼らず、予測した反論への解決策を、バイヤーの採用理由として言葉にする。

この積み重ねが、個人の経験を組織の力に変え、バイヤーとの信頼関係を深めていくのです。

次回予告

提案書作成術 第9回:本番前に卸と『落としどころ』を共有する段取り

「決めの1枚」が完成しても、自分の仮説だけを頼りに本番へ臨むのは危険です。

次回は、商談前に卸の担当者へ提案内容を説明し、仮説のズレを確認するとともに、本番でどこまで合意を目指すのかという「落としどころ」を共有する方法についてお話しします。