提案書作成術最終回 第13回 「全12回総集編」アップしました。  11月より新シリーズスタートします。お楽しみに!!

提案書作成術 第11話 商談中に自分を客観視する「メタ認知」の磨き方

自分の話し方を一段引いて捉える

第10話では、商談前に立てた仮説と、実際にバイヤーが示した反応とのズレを、商談直後のAARで振り返る方法についてお話ししました。

商談の場で、こちらの伝えたいことを一方的に話してしまい、バイヤーが引いていることに気づかなかった。そんな経験はないでしょうか。

特に、自信のある商品を提案しているときほど、説明に熱が入り、周囲が見えなくなりがちです。

こうした状況を防ぐために必要なのが、商談中に、

今、自分はどのような状態になっているか。
自分の話し方は、相手にどう受け止められているか。

と、一段引いて自分を捉える力です。

心理学では、自分の考えや感情、行動を客観的に捉え、必要に応じて調整することを「メタ認知」と呼びます。

商談をしている自分を、もう一人の自分が少し離れたところから見ているような感覚です。

今、バイヤーから断られるのが怖くて、話すスピードが速くなっている。

一方的な商品説明が続いている。ここで話を止めて、質問してみよう。

このように、自分の状態に気づき、その場で話し方や進め方を変えることが、商談におけるメタ認知です。

AARの習慣が商談中の気づきを増やす

メタ認知は、生まれ持ったセンスだけで決まるものではありません。

その力を磨く方法の1つが、第10話で紹介した「商談直後の5分間のAAR」です。

AARでは、商談が終わった後に次の4つを振り返りました。

  • 今回の商談で何を目指したのか
  • 実際に何が起きたのか
  • なぜ、それが起きたのか
  • 次はどうするのか

この振り返りを繰り返していると、商談後だけでなく、商談中にも自分の状態や相手の反応に気づきやすくなります。

例えば、バイヤーから、

来月の導入は難しいですね。

と言われたとします。

これまでは、その言葉を聞いた瞬間に「そうですか」と引き下がったり、反対に、採用してもらおうと商品説明を重ねたりしていたかもしれません。

しかし、自分を一段引いて見られると、次のようなことに気づけます。

今、自分は断られることを恐れて、早口で説明を続けようとしている。

そして、自分の話を止めることで、バイヤーの様子を見る余裕が生まれます。

バイヤーは「1店舗あたり6日に1個」という販売目標を示したページで手を止め、資料を見ている。何か気になる点があるのかもしれない。

ここで大切なのは、バイヤーのしぐさだけを見て、懸念の内容を決めつけないことです。

手が止まったことは観察できた事実ですが、なぜ止まったのかは、まだ分かりません。

気づいたら説明を止めて相手に確認する

バイヤーの反応に気づいたら、推測だけで結論を出さず、本人に確認します。

例えば、次のように問いかけます。

この販売目標について、店舗で実施するうえで気になる点はありますか?

すると、バイヤーから、

数字そのものよりも、この売場展開を各店舗で実施できるかが気になります。

といった、具体的な懸念を聞けるかもしれません。

「表情が曇ったから、店舗オペレーションを懸念しているはずだ」と決めつけるのではありません。

相手の反応に気づき、説明を止めて質問し、本人の言葉で確認する。この一連の動きが、商談を対話に変えます。

どれほど提案書をつくり込んでも、商談を動かすのは、その場にいる相手とのやり取りです。

一方で、提案書や「決めの1枚」の準備が不要になるわけではありません。

事前に、

バイヤーは、ここを懸念するのではないか。

という仮説を用意しているからこそ、営業担当者は資料の説明だけに追われず、実際の反応との違いに気づけます。

  • 商談前に反論を予測する
  • 「決めの1枚」を準備する
  • 商談中に自分と相手の反応を観察する
  • 仮説と違えば、説明を止めて質問する
  • 商談後にAARで振り返る

この繰り返しによって、自分の話し方を客観的に捉え、バイヤーの反応に合わせて対話を修正する力が磨かれていきます。

メタ認知とは、商談中に何でも冷静に分析することではありません。

まずは、

今、自分は一方的に話していないか?

と気づき、一度説明を止める。

この小さな行動から、自分たちの商談の型を進化させていきましょう。

次回予告

提案書作成術 第12回:『誰から買うか』が重要な時代に選ばれる営業の条件

AIによって商品や市場の情報を簡単に収集できる時代に、営業担当者にはどのような価値が求められるのでしょうか。

次回は、「決めの1枚」とAARを軸に、これまでの商談の型を振り返りながら、バイヤーから相談相手として選ばれる営業の条件と、営業という仕事の面白さについてお話しします。