提案書作成術最終回 第13回 「全12回総集編」アップしました。  11月より新シリーズスタートします。お楽しみに!!

提案書作成術 第13回 全12回総集編

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提案書作成術 総集編|全12回でつくる「商談前・商談中・商談後」の型

食品メーカーの営業が、マーケティング部門や商品企画部から支給された提案書を使って、新商品を説明する。

商品の特徴、市場データ、消費者調査、開発の背景……。提案書には多くの情報がそろっています。その内容を順番に説明しただけでも、商品力やタイミングが合えば採用されることはあります。

しかし、それだけでは営業が商談にいる意味は、少しずつ薄くなっていきます。

商品や市場に関する情報を、バイヤー自身が簡単に調べられる時代です。営業に求められるのは、情報を詳しく説明することではありません。

得意先の現実を踏まえて、

「なぜ、この商品なのか」
「なぜ、今なのか」
「なぜ、この得意先なのか」

を考え、バイヤーが社内で説明できる形にして提案することです。

全12話の「提案書作成術」では、提案書の見栄えをよくする方法ではなく、商談前に仮説を立て、商談中に相手の反応を確かめ、商談後に振り返るまでの一連の型を紹介してきました。

今回は、その全体像を「商談前・商談中・商談後」の流れで振り返ります。

提案書は、スライドをつくる前の骨子で決まる

食品メーカーの商談時間は、長くても10~15分ということがあります。

その限られた時間に、支給された提案書を最初から最後まで説明しようとすると、商談はどうしても「カタログ型」になります。商品情報を正確に伝えることに意識が向き、バイヤーが知りたいこととの間にズレが生まれるからです。

そこで、最初に必要になるのが、第2話で紹介したPREPによるセルフチェックです。

PREPは、主張・理由・具体例・結論の順番で話すための型として知られています。しかし、この連載ではPREPを話し方のテクニックではなく、商談前に提案の論理を点検する型として扱いました。

大切なのは、きれいにPREPを組み立てることではありません。誰の事情を起点に「理由」を考えているかです。

「当社の新商品は、これまでにない特徴があります」
「消費者調査でも高い評価を得ています」

これらはメーカーにとっての理由です。そのままでは、バイヤーにとって自分事になりません。

得意先の売上目標、カテゴリーの課題、棚替えの時期、店舗作業の負担などを踏まえ、「この得意先にとって、なぜ提案を検討する意味があるのか」を組み立てる。ここから提案書づくりが始まります。

PREPで骨子をつくったら、次に、その骨子に沿ってスライドを見直します。

判断基準は、データが詳しいか、デザインがきれいかではありません。

このスライドは、今回の商談でPREPの骨子を伝えるために、本当に必要だろうか。

必要性が低いスライドは本編から外し、質問されたときに使えるよう巻末資料へ移します。情報を捨てるのではなく、商談の本編と補足資料を分けるのです。

スライドを引き算すると、説明する時間が短くなり、バイヤーと対話する時間が生まれます。

第4話では、PREPの「E(具体例)」の解像度を高めるために、目標数字を売場でイメージできる単位まで分解しました。

たとえば、「カテゴリー売上105%を目指します」と言われても、その実現可能性をすぐに判断するのは困難です。

そこで、売上の上積み額を商品単価、店舗数、販売日数で分解します。15万円の上積みを、売価300円、100店舗、30日間で考えると、必要な販売数量は500個。1店舗、1日あたりでは約0.17個、つまり「1店舗あたり6日に1個」です。

数字を小さく見せることが目的ではありません。

「6日に1個」を実現するために、どこに展開し、何と差し替え、どのような販促を行うのか。数字を売場の行動に置き換えることで、初めて販売プランの実現可能性を検討できるようになります。

バイヤーの反論から「決めの1枚」をつくる

PREPを整え、不要なスライドを引き算し、数字を売場でイメージできる単位まで分解する。

ここまで準備しても、商談がそのまま採用に進むとは限りません。

バイヤーからは、

「販売実績がないので不安です」
「これ以上SKUを増やせません」
「店舗の作業負担が増えそうです」

といった反論が返ってきます。

反論を受けてから、その場で考えるのでは遅い。商談前に、バイヤーが何を懸念するか仮説を立てておく必要があります。

高額なPOSデータがなくても、仮説の材料は集められます。

得意先や競合チェーンの売場を観察する。過去の商談でバイヤーが話した言葉を思い返す。卸担当者に、最近バイヤーが何に頭を悩ませているか聞いてみる。

こうした現場情報と今回の提案を突き合わせ、商談の障害になりそうなことを洗い出します。

その際には、

  • バイヤー・得意先の要因
  • 自社であるメーカー側の要因
  • 競合や消費者変化などの外部要因
  • 組織や制度上の要因

という視点で整理すると、見落としを減らせます。

ただし、反論を数多く予測することが目的ではありません。今回の商談で採用を阻む可能性が最も高い障害を、一つの仮説として絞り込むことが重要です。

次に行うのが要因分析です。

たとえば、「販売実績がないので不安だ」という反論が予測されたとします。

この言葉だけを受け取れば、消費者調査の結果やテスト販売の実績を追加したくなるでしょう。しかし、バイヤーがそう言う背景には、複数の可能性があります。

カテゴリー売上が伸び悩んでおり、売れる確証がない商品を入れるリスクを避けたいのかもしれません。あるいは、他社の類似商品とどちらを採用するか迷っているのかもしれません。

背景にある要因が違えば、準備すべき解決策も変わります。

売上の下振れを避けたいのであれば、低回転商品との差し替えと「6日に1個」の販促プランを示す。他社商品と迷っているのであれば、ターゲットや売場での役割の違いを比較して示す。

この解決策を、口頭のアドリブだけで説明してはいけません。

商談後、バイヤーが上司や関係部署から「実績のない商品を、なぜ導入するのか」と聞かれたとき、営業の熱い説明はその場に残っていないからです。

そこで第8話では、予測した反論への解決策を、商談の切り札となる「決めの1枚」にまとめました。

「決めの1枚」とは、バイヤーが抱くと予測した懸念に対して、その解決策と得意先のメリットを1枚で示したスライドです。

提案の障害を隠すのではなく、バイヤーが社内で説明できる採用理由へと言い換える。これが「決めの1枚」の役割です。

完成した提案書は、いきなり本番商談へ持ち込まず、事前に卸担当者へ見てもらいます。

卸担当者は、メーカーとは異なる立場から、得意先の事情を見ています。

「その差し替え商品は、バイヤーが残したがっています」
「全店導入より、まず一部店舗で試すほうが通りやすいです」
「この時期は、店舗作業を増やす提案は難しいと思います」

このような意見をもらえれば、本番前に仮説のズレを修正できます。

事前商談は、卸担当者から提案書の承認をもらう場ではありません。今回の提案でどこまでを目指すのか、難しかった場合にどこを落としどころにするのかを共有する場です。

準備した提案に固執せず、相手の反応を見る

商談前に十分な準備をすると、「準備した内容をすべて説明しなければならない」という意識が生まれることがあります。

しかし、提案書は読み上げるための台本ではありません。バイヤーと対話するための土台です。

商談中に必要になるのが、メタ認知です。

メタ認知とは、自分の考え、感情、行動を客観的に捉え、必要に応じて調整する力です。

バイヤーから「来月の導入は難しいですね」と言われたとき、NOを恐れて早口で説明を重ねていないか。「1店舗あたり6日に1個」と書かれたページで、バイヤーの手が止まったことに気づいているか。

斜め上から、もう一人の自分が商談を見ているような感覚で、自分と相手の反応を観察します。

相手の反応に違和感を持ったら、説明をいったん止めます。

「この数字について、何か気になる点がありますか」
「導入するとしたら、どこが一番の障害になりそうでしょうか」

と質問し、本人の言葉で確認します。

大切なのは、表情やしぐさから相手の気持ちを決めつけることではありません。反応に気づき、説明を止め、質問して確かめることです。

商談前の仮説は、正解ではありません。商談中の対話によって確かめ、必要ならその場で修正するためのものです。

商談後の5分で、経験を次の力に変える

商談が終わると、すぐに次の得意先の準備へ切り替えたくなります。

採用されれば安心し、不採用なら「今回は仕方がなかった」と気持ちを切り替える。しかし、商談をやりっぱなしにすると、経験を重ねても商談の質はなかなか上がりません。

経験は、積むだけで自動的に学びへ変わるわけではありません。

振り返って、次の行動を変えたときに、初めて自分の力になります。

そこで第10話では、商談直後の5分で行う振り返りとして、AAR(After Action Review)を紹介しました。

商談直後、駅のホームや駐車した車の中で、手帳やスマートフォンのメモに次の4項目を書き留めます。

1.今回の商談で何を目指したのか
2.実際に何が起きたのか
3.なぜ、それが起きたのか
4.次は何を変えるのか

長い反省文を書く必要はありません。大切なのは、商談前の仮説と実際の反応を比べ、そのズレを見つけることです。

たとえば、商談前には「販売実績の不足」が最大の障害だと予測していた。しかし、実際にはバイヤーから「棚のどこに展開し、何と差し替えるのか」と聞かれ、明確に答えられなかった。

この場合、次の商談で変えるべきことは、販売実績をさらに集めることではありません。得意先の棚割りを確認し、具体的な展開場所と差し替え候補を準備することです。

ただし、商談直後に考えた原因も、まだ仮説です。

卸担当者に意見を聞いたり、次回の商談でバイヤーに確認したりしながら、仮説を修正していきます。

AARを繰り返すと、商談後だけでなく、商談中にも自分と相手の反応に気づきやすくなります。振り返りの習慣が、メタ認知を磨くことにもつながるのです。

型の目的は、商談を思いどおりに進めることではない

この連載では、PREP、引き算、数字の分解、反論予測、要因分析、「決めの1枚」、卸との事前商談、メタ認知、AARという型を紹介してきました。

しかし、これらの型をすべて使えば、必ず商品が採用されるわけではありません。

型の目的は、商談を自分の思いどおりに進めることではないからです。

商談前に自分の考えを整理し、相手の反応を受け止め、商談後に仮説を修正する。型は、この繰り返しを支えるためにあります。

最初からすべてを実践する必要もありません。

カタログ型提案書を読み上げていると感じるなら、まずPREPで骨子をつくってみる。提案書が長いなら、骨子に沿わないスライドを巻末へ移す。バイヤーの反論にその場で答えられないなら、商談前に最大の障害を一つ予測する。商談をやりっぱなしにしているなら、商談後に5分だけAARを行う。

自分の商談で最も改善したいところから、一つ始めれば十分です。

商品情報や市場データを簡単に収集できる時代に、営業の価値は、情報を詳しく説明することだけでは生まれにくくなっています。

得意先の現実を理解し、売場で実行できる大きさまで数字を分解し、リスクを抑えたプランを一緒に考える。そして、結果を振り返りながら提案を進化させていく。

そうした積み重ねが、この人なら、自社の事情を踏まえて一緒に考えてくれる

という信頼につながります。

第12話では、この積み重ねこそが、「何を買うか」だけでなく「誰から買うか」が問われる時代に、営業が選ばれる条件だとお伝えしました。

提案書をきれいに仕上げることをゴールにせず、バイヤーとの対話を生み出し、次の行動につなげるための道具として使う。

それが、全12話を通してお伝えしてきた「提案書作成術」です。

新シリーズ予告(※次回は11月9日に更新します)

「提案書作成術」では、一人の営業が仮説を立て、商談で確かめ、振り返りながら提案を磨く型を紹介してきました。

しかし、支店や営業所に目を向けると、数字や営業報告はそろっていても、メンバーがそれぞれ違う景色を見ていることがあります。これでは、営業会議も結果報告や目の前の問題への対応で終わってしまいます。

次回作は、「営業エリアマネジメント入門―同じ絵を見て、見立てと打ち手を磨く」です。

手元にある出荷実績やPOS、星取り表、営業報告を一枚のダッシュボードにまとめ、マネジャーとメンバーが市場の変化をどう見立て、2〜3カ月先の打ち手へつなげるのか。

高度な分析や数字による監視ではなく、「売りながら考え、考えながら売る」営業現場のつくり方を、全12話で考えていきます。