
あなたは、新しい挑戦にどのような気持ちで臨みますか?
大学を卒業し、丸閥食品(まるばつしょくひん)に入社して、あっという間に数年が経った丸尾くん。新人の頃は右も左も分からず、角井さんの背中を見ながら必死に食らいついていた日々。商談の事前準備の大切さ、商品の売上を構成する要素、ストアチェックの重要性、そして商談後のラップアップ…。一つずつ教えてもらい、がむしゃらに駆け抜けてきた。幸い、初めて担当させてもらった得意先であるサンライズチェーンでは、規模は大きくなかったものの、バイヤーさんと少しずつ信頼関係を築くことができた。
そんなある日、正和支店長に呼び出された。
いつものように「なんだろう?」と思いながら支店長室のドアをノックする。
「おう、丸尾。ちょっといいか」
恰幅の良い正和支店長は、少し真剣な顔つきだった。
「はい、何でしょうか」
支店長の向かいに座ると、おもむろに本題を切り出された。
突然の辞令、そして「大手チェーン担当」へ
「単刀直入に言う。お前を、本社にある広域営業部に異動させようと思う」
「え…、本社…ですか?」
予想もしなかった言葉に、丸尾くんは思わず固まってしまった。本社は、入社時の研修以来、足を踏み入れていない場所だ。そして、広域営業部という部署も初めて聞く名前だった。

支店長は続けた。「会社の営業改革の一環で、広域チェーンを担当する部署を新設することになったんだ。今までは各支店でバラバラに担当していたナショナルチェーンや広域チェーンを、本社で集中的に見ることで、より戦略的な営業を展開していく狙いだ。」
「丸尾、お前には広域営業部で、ハトー屋を担当してもらおうと思う。」
「ハトー屋…。」
ハトー屋は、業界でも指折りの大手広域チェーンだ。
新人の頃に角井さんに同行させてもらったオーインと全国で競争しているほどの規模のチェーンだと聞いている。まさか、自分がそんな大口の得意先を担当するなんて、考えもしていなかった。
「ハトー屋は、これまで佐藤さんが担当していたんだが、この度、彼が異動することになって、その後任をお前に託したいということだ。」
佐藤さん。ベテランの先輩で、ハトー屋とは長い付き合いだと聞いたことがある。
その先輩が異動。そして自分が後任…。一気に頭の中が混乱する。
「あの、異動の時期は…」
「再来週の月曜からだ。急な話で悪いな」

急な異動話に、丸尾くんは言葉を失った。数年前にこの支店に配属された時も、まともな営業研修もないまま現場に放り込まれたが、今回もまた、何も心の準備ができていないまま、未知の世界に飛び込むことになった。
「ハトー屋は、これまでのやり方を大きく変えていく必要があるんだ。簡単な相手じゃない。大きな予算を任されることになるから、プレッシャーも大きいだろうな」
支店長は、丸尾くんの顔をじっと見ていた。
その言葉は、期待とともに、厳しい現実を突きつけているようにも聞こえた。
「不安か?」
「…はい、正直、すごく不安です」
「まぁ、そうだろうな。ハトー屋の担当は、会社にとっても重要な得意先だからな。だが、お前ならできると私は信じている。」
支店長は、丸尾くんの肩をポンと叩いた。
支店長の激励と、新たなステージへの決意
「私は昔ながらのやり方が染み付いているからな。名実ともに俺は昭和だから」といつもの口癖を挟みつつ、「新しいやり方を柔軟に取り入れて、会社を変えていこうとしている角井のような人間もいる。お前にも会社に新しい風を吹き込んで欲しいんだ。」
「それに、まぁ丸尾が失敗しても会社は潰れないから気楽に行け」
その言葉に、少し肩の力が抜けるのを感じた。そうだ、自分一人で抱え込む必要はない。
新しい環境で、新しいやり方を学び、挑戦するチャンスを与えられたのだ。
「ありがとうございます。精一杯頑張ります!」
支店長室を出た丸尾くんは、期待と不安、そしてこれまでの経験で培った少しの自信を胸に、新たなステージへの決意を固めたのだった。
次回予告
突然の異動に戸惑う丸尾くん。しかし、立ち止まっている暇はない。まずは、これまで担当してきた得意先への引き継ぎだ。慌ただしく始まった引き継ぎ業務の中で、丸尾くんは自社の「ある問題点」に気づくことになる…。そして、異動先に、思いがけない人物の姿が…!?
次回、「【引き継ぎ業務】得意先情報がブラックボックス化!?情報共有の課題」お楽しみに!