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中級編 第16話【組織強化】丸閥食品流プロセス完成!営業の仕組み化で未来を創る

営業プロセスを標準化する。営業組織を強くするために必要なこと

ハトー屋への提案が採用され大きな一歩を踏み出した丸尾くん。プロジェクト堅牢盤石の提案で得られた経験は、単なる一得意先への対応にとどまらない会社全体の財産となりつつあった。

その日、丸尾くんは角井さんとともに伊藤部長に呼び出された。

「丸尾、角井。今回のハトー屋での取り組み本当にご苦労だった」

伊藤部長は、改めて労いの言葉をくれた。

「実はな、今回の取り組みを会社全体のモデルケースにしたいと思っているんだ」

「モデルケース、ですか?」

「そうだ。君たちが今回のハトー屋に対して実施した業務の流れ、あれを整理して標準化したいんだ」

伊藤部長の指示に、丸尾くんは驚いた。自分たちが試行錯誤しながら進めてきたプロセスを会社の標準プロセスにするというのか。

「今後、ハトー屋のような重要な取引先に対して同じようなアプローチを展開できるように、業務プロセスを文書化しておきたいんだ」

確かにその方が良い。担当者が変わっても一定レベルの営業活動ができるようになるだろう。
しかし、一体何をどうやってまとめれば良いのだろう…。丸尾くんが戸惑っていると、角井さんが口を開いた。

「わかりました。丸閥食品流の『アカウントマネジメント』プロセスを作るイメージでよろしいでしょうか?」

「アカウントマネジメント…? あぁ、角井、それはMAX食品にはあったのか?」

伊藤部長は角井さんに尋ねた。

「はい。前職では営業マニュアルとして標準的な営業プロセスがまとめられていました。そして、そのマニュアルを元に営業トレーニングも実施されていました」

角井さんの言葉に、伊藤部長は深く頷いた。

「なるほど、そこまで踏まえて作り上げた方がより実効性があるな」

伊藤部長は、丸尾くんと角井さんに指示を出した。「では、将来的な営業トレーニングを見越して、誰にでも理解・実行できるような形で今回のプロセスをまとめてみてくれ」

その日から、丸尾くんと角井さんは丸閥食品流のアカウントマネジメントプロセスを作り上げるための定期的な打合せを開始した。丸尾くんは、今回のハトー屋での取り組みを時系列で詳細に振り返り、どのようなステップで進めてきたかをまとめた。情報収集、問題点の整理と課題設定、解決策の検討、プラン作成、プレゼンテーション、フィードバックを受けての修正・計画、そして実行・実践、効果検証…。

一方、角井さんは前職での標準的な営業プロセスを思い出しながら、丸閥食品の状況にどのように適応できるか検討した。大手メーカーと丸閥食品とでは、使えるリソースや組織体制が異なるためそのまま真似するわけにはいかない。丸閥食品の強みを活かしつつ必要な要素を取り入れる必要がある。

何度かの打合せを経て、丸閥食品流のアカウントマネジメントプロセスの骨子が固まった。
情報収集・整理⇒問題列挙と課題設定⇒解決策⇒プレゼン⇒修正・計画⇒展開・実践⇒効果検証。
この一連のプロセスに各ステップでの具体的な実施事項(誰が、何を、いつまでに行うかなど)を加え分かりやすいマニュアルとしてまとめ始めた。

「どうせ上手くいかない」変化を阻む最大の敵は社内にいた

ところが伊藤部長の指示が社内に広がり始めると、全ての社員が歓迎するわけではないことが判明します。
丸尾くんが給湯室でコーヒーを入れていると、他部署のベテラン営業たちの会話が聞こえてきます。「聞いたか?ハトー屋の件、マニュアル化するらしいぞ」、「ハトー屋はたまたま上手くいっただけだろ。俺たちの担当先で同じことができるわけない」、「また現場を知らない人たちで、面倒なことを始める…」そんな陰口に丸尾くんの心は少し曇ります。

後日、そのベテランの一人が角井さんに対しても、「角井さんもマニュアル作りを手伝ってるんだって?綺麗なマニュアルで営業ができるなら苦労しないよな」と揶揄するように話しかけます。

すると角井さんは笑顔を崩さず、しかしきっぱりと言い返します。「ええ。でも先輩のその素晴らしいご経験こそ、マニュアル化して会社の資産にすべきだとは思いませんか?このまま個人の経験則だけに頼っていては会社は先細りです。私たちは、未来の丸閥食品のためにやっているんです」その毅然とした態度にベテランは少しバツが悪そうに去っていきます。

この一連の出来事を通じて、丸尾くんは新しいことを成し遂げるには社外だけでなく社内にも見えない壁があることを痛感します。しかし、それは同時に自分たちのやっていることの重要性を再認識する機会にもなりました。「このプロセスを完成させることが、会社を強くするんだ」と、彼は決意を新たにするのです。

数ヶ月後。丸尾くんと角井さんが心血を注いだ「丸閥食品流アカウントマネジメントプロセス」の初版がついに完成した。まだ骨子だけの荒削りなマニュアル。しかし、そこにはハトー屋との戦いで得たチームの汗と涙と知恵の全てが詰まっていた。

完成したマニュアルのファイルを閉じながら丸尾くんは窓の外を見つめた。社内の抵抗は、まだ根強い。そして、この武器がハトー屋以外のもっと手強い相手に通用するという保証はどこにもない。

「でも…」と彼は思う。「この武器はまだ生まれたばかりだ。これを本当の意味で会社の力に変えるには、現場で実践し改善しそして何より自分自身がこの武器を使いこなして結果で証明するしかない」

中級編の物語は、ここで一つの区切りを迎える。しかし、それは終わりではない。会社の仕組みづくりに関わる存在へと成長を遂げた丸尾くんの、本当の戦いの始まりを告げる号砲でもあった。

次回予告

ついに完成した「丸閥食品流アカウントマネジメントプロセス」しかし、それはまだハトー屋という一つの戦場でしか通用しない荒削りな「試作品」に過ぎなかった。

この武器は本当に会社の力になるのか?

次なる丸尾くんの挑戦の舞台は、業界大手にしてデータ至上主義の「メガマート」そこで彼を待ち受けていたのは、ID-POSという最新兵器で武装したMAX食品のエース営業の影山さん。そして、こちらの「熱意」や「現場感」が一切通用しない氷のように冷徹なバイヤーだった。

自信を打ち砕かれ、絶望の淵に立たされたチーム。彼らは、自分たちだけの「戦い方」を見つけ出しこの巨大な壁を打ち破ることができるのか?

新シリーズ「アカウントマネジメント実践編」、ご期待ください!