
ヒアリングにより仮説の精度を上げられていますか?
前回の打合せを経て、丸尾くんのやるべきことは明確になった。公開情報から立てた自分たちの『仮説』が、本当に正しいのか。それを検証するために現場の『本音』を聞き出すこと。 藤原課長からも「公開情報だけを鵜呑みにするな」と釘を刺されている。丸尾くんは、次のステップであるヒアリングに向けて早速準備に取り掛かった。まずは帳合の三国食品・鈴木さん、そしてハトー屋の山葉バイヤーに話を聞くことからだ。
まず、自分なりにハトー屋の戦略やカテゴリーの課題について仮説を立てた質問リストを整理した。
「なぜ〇〇な戦略をとっているのですか?」「〇〇の課題について現場ではどのように感じていますか?」など、公開情報から得た情報を掘り下げる質問やまだ見えていない本音を引き出す質問を考えた。
作成したヒアリングリストを自信なさげに藤原課長に確認してもらうと、藤原課長は丸尾くんのリストを見ていくつか修正点を指摘してくれた。
「なかなか良いリストができたね。ただ、もう少し『なぜ』を深掘りする質問を入れると相手の本音が引き出しやすいかもしれない」
課長からのアドバイスを受け、質問リストをブラッシュアップした。そして帳合の鈴木さんとの打合せの際に作成したヒアリングリストを使用してみた。

その仮説あなたの「思い込み」では?情報の質を上げるヒアリング術
「鈴木さん、ハトー屋さんの今後の店舗改装についてですが…」と切り出した時丸尾くんは少し緊張で声が上ずるのを感じた。自分の立てた仮説が的外れだったらどうしよう。しかし、鈴木さんは丸尾くんの質問を遮ることなく真剣な眼差しで耳を傾けてくれた。その誠実な態度に、丸尾くんは少しずつ落ち着きを取り戻していった。「改装のモデル店舗となる大福店は社内でどのように評価されているのでしょうか?」
丸尾くんは、丸閥食品として挙げた3つの課題を中心に鈴木さんに質問を投げかけた。鈴木さんは、丸尾くんの質問に一つ一つ丁寧に答えてくれた。
鈴木さんとのヒアリングは、丸尾くんにとってまさに目から鱗が落ちるような情報の連続だった。
まず、山葉バイヤーの上司である川崎部長は非常にロジカルで定量的な判断を好む人物だということ。「なるほど、だからこそデータに基づいた提案が重要になるのか…」と丸尾くんは納得する。
さらに驚いたのは、その川崎部長がこれまでの延長線上だけでなく新しいことにも積極的にチャレンジする考えを持っているという事実だった。これは自分たちの提案が受け入れられる大きなチャンスかもしれない。
そして、決定的な情報がもたらされる。ハトー屋が水面下で進めている新業態開発プロジェクトが、「小商圏フォーマットづくり」に方向性が定まったというのだ。
これらの情報は、丸尾くんたちが立てた仮説を裏付けるだけでなく、プランの方向性をよりシャープにする、極めて重要な示唆だった。
これらの情報を踏まえて鈴木さんは丸尾くんにアドバイスをくれた。
「丸尾さん、今回の提案にあたっては目先の改装への対応だけでなくハトー屋さんが目指す『小商圏フォーマットづくり』に合う中長期のテーマ設定をして欲しい、という考えがハトー屋の上層部にはあるようです」
「中長期のテーマですか…」丸尾くんは改めてアカウントマネジメントの重要性を感じた。

「それに部長の元口としても、今回の件をきっかけにハトー屋とのパイプを太くしたいという思いがあります」鈴木さんは三国食品の上層部の意向も伝えてくれた。
さらに、提案にあたっては鈴木さん自身も積極的に巻き込んで欲しいという要望も伝えられた。
三国食品として、ハトー屋と丸閥食品の間の関係を改善し円滑な取引に貢献したいという鈴木さんの強い思いが伝わってきた。
鈴木さんへのヒアリングは、丸尾くんの仮説を検証しプランの方向性をより明確にする上で非常に有益な時間となった。公開情報だけでは決して得られない、得意先や帳合の「生の声」を聞き出すことの重要性を丸尾くんは改めて実感した。
次回予告
ヒアリングで得られた情報をもとにいよいよハトー屋への具体的な提案プランを練り上げる! 限られたリソースの中でハトー屋にとって最大のメリットを提供できる唯一無二のプランとは? 丸尾くんたちは知恵を絞る!