
トラブルを解消するために上司を巻き込むとは?
ハトー屋との信頼関係再構築プロジェクト「堅牢盤石」
カテゴリーPL改善と並行して進める関係構築のステップで、丸尾くんは「上司を巻き込む」という課題に直面していた。角井さんからは「まず自分で考えてみなさい」と言われたものの、「そもそも何のために伊藤部長や藤原課長を巻き込むのか?」「具体的にどうやって、どんな状況で巻き込めばいいのか?」、疑問ばかりが頭の中を駆け巡っていた。

悩んでも答えが見つからない時、丸尾くんは頼れるビジネスパートナーである三国食品の鈴木さんに相談してみることにした。鈴木さんとは、商談に関する情報のやり取りはしているがそれ以上話をしたことがなかった。ただ、引き継ぎの時に「これから大変だね」と声をかけてくれたことを思い出した。
その日、ハトー屋の件で三国食品を訪れていた丸尾くんは、打合せの合間に少し愚痴混じりに鈴木さんに話してみた。
「鈴木さん、実は今、ハトー屋の山葉バイヤーとの関係構築に悩んでいまして…。会社としても信頼回復を目指すことになったのですが、その中で『上司を巻き込む』ことが必要だと言われたんです。でも、具体的なイメージが湧かなくて…」
丸尾くんの話を聞いた鈴木さんは、「それはいいアイデアだ」と予想外の返事をした。
そして続けて、「私も上司の元口(もとぐち)の同席を打診してみましょうか」と提案してくれた。
「え…、元口部長を…ですか?」丸尾くんは驚きすぎて一瞬フリーズしてしまった。
鈴木さんは、そんな丸尾くんを見て優しく言った。
「問題解決を、当事者だけでなく上司にも委ねるということですよ」
そして、なぜ上司を巻き込むことが有効なのか丁寧に話をしてくれた。
鈴木さん曰く、今回のハトー屋さんの件のように過去の取引で問題があった場合、担当者同士だとどうしても感情的なもつれやわだかまりが残ってしまうことがある。一方、直接その問題に関わっていなかった上司同士であれば、比較的フラットな立場で冷静に話し合うことができる。上司同士が関係を構築することで、担当者間の個人的な感情を超え会社対会社、部署対部署として新たな関係を目指すことができるのだという。
「当事者間だと感情的なもつれが生じやすい」という鈴木さんの話は、丸尾くんにとって非常に納得できるものだった。確かに、山葉バイヤーと話していると佐藤さんに対する不信感が透けて見えるように感じた。その中で、自分一人で関係をひっくり返すのは至難の業だろう。
しかし、具体的にどうやって、どんな理由でハトー屋の上層部と自社や元口部長が面会する場をセッティングするのか丸尾くんにはまだ分からないことだらけだった。
鈴木さんは丸尾くんの様子を見て、「今日はこの後も予定があるので、改めて日程を調整しませんか」と言ってくれた。「それまでに私の方で、どうすれば自然な形で上司同士の面会を実現できるかプランを考えてみます」

鈴木さんは、声を潜めて続けた「実は、最近MAX食品が最近かなりハトー屋さんに食い込んでいて…。彼らも次の改装に向けて何か大きな提案を準備しているらしいですよ。MAX食品は帳合が違うので、われわれとしても何か対処しないとって考えていたんです。だからこそ、ここは一つ上のレイヤー…伊藤部長や部長の元口にも入ってもらって、会社対会社としての大きな流れを作る必要があると思うんです」
「よ、よろしくお願いします!」 丸尾くんは鈴木さんの申し出に心から感謝し、その日は鈴木さんと別れた。
三国食品さんは単に商品を流通させるだけでなく、得意先とメーカーの間に立ってこうした人間関係の調整役も担ってくれる存在なのだと改めて学んだ。
担当者間の壁は「組織」で越える。あなたは上司と卸を巻き込めますか?
後日、改めて鈴木さんを尋ねると、鈴木さんは考えてくれていたプランを説明してくれた。
それは、ちょうど時期が近づいている半期提案の機会を利用して、ハトー屋、丸閥食品、そして三国食品の3社とその上司(ハトー屋の部長は川崎部長という方らしい、元口部長、伊藤部長、藤原課長など)を交えて、新しい取り組みを提案し意見交換を行う場としてはどうか、という内容だった。
提案する新しい取り組みの内容についても、事前に鈴木さんはじめ三国食品の方々とも十分に擦り合わせを実施し、ハトー屋の意向とズレた提案にならないよう協力してもらえるということであった。
鈴木さんの提案は、単に上司を会わせるだけでなく、明確な目的(新しい取り組みの提案)と、得意先にとってのメリット、そして卸の協力まで含んだ非常に練られたものだった。丸尾くんは鈴木さんのビジネススキルと温かい心遣いに感動し心からお礼を言って事務所に戻った。
事務所に戻るなり、丸尾くんは今日の話を角井さんに報告した。
「鈴木さん、すごいプランを考えてくれたんです! 半期提案の機会に、3社の上司で会って、新しい取り組みを提案する場を作ってくれるって…」
丸尾くんの話を聞いた角井さんは、目を輝かせて言った。
「すごいわね、丸尾くん!鈴木さんと一緒にそんな話をしていたなんて!」
そして続けた。「これはまたとないチャンスじゃない! 当事者同士で難しかった関係構築を、上層部も巻き込むことで大きく前進させられる可能性があるわ。まさにアカウントマネジメントの重要なステップね。鈴木さんのアイデアは素晴らしいし、それを引き出した丸尾くんも素晴らしいわ」
角井さんに褒められ、丸尾くんは自信が湧いてきた。
藤原課長にも報告し、課長も「これは大きな一歩だ」と喜んでくれた。角井さんのアドバイスもあり、早速藤原課長も交えて鈴木さんのプランを実現するための具体的なミーティングを行うことになった。
多くの人の協力と、練られた戦略によってプロジェクトは少しずつ前進していた。丸尾くんは今回の経験を通じて、一人で抱え込まずに周囲を巻き込むこと、そしてビジネスパートナーとの信頼関係が困難な状況を打破する大きな力になることを深く実感していた。
次回予告
上層部を巻き込んだ「半期提案」に向け具体的なプラン作りが始まる! 短期的な成果だけでなく、ハトー屋との中長期的な関係構築を目指すアカウントマネジメント。一体どのようなプランが練られるのか? そして、伊藤部長から丸尾くんに意外な言葉が…!