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中級編 第3話【本社での引き継ぎ】前任者の急な退職!引き継ぎから学ぶ情報共有の問題

あなたから引き継げて良かった」。そう言ってもらうために、どんな準備をしますか?

支店での慌ただしい引き継ぎを終え、感傷に浸る間もなく、翌週明け、丸尾くんは本社に出社した。
新入社員の頃以来だ。本社が入るビルに足を踏み入れると、見慣れない顔ばかりで、少し緊張する。
社内のレイアウトも変わっていて、フロアも以前とは違うようだった。

心強い先輩との再会と、新たな部署でのスタート

広域営業部のフロアに向かうと、見慣れた後ろ姿が目に飛び込んできた。

「おはようございます。角井さん!」

声をかけると、角井さんが振り返った。

「あら、丸尾くん!おはよう!こうして朝の挨拶をするのも久しぶりね」

「角井さん、広域営業部に異動だったんですね?」

「ええ、そうなのよ。ここでコンビニエンスストアのチューソンを担当しているの。この前メールで連絡もらった時に私も異動が決まっていたんだけど、驚かせようと思って黙っていたの。まぁ私も急な配置転換だったんだけどね。今日から丸尾くんが来るのを楽しみに待っていたわ」

まさか、角井さんと同じ部署になるとは!
不安でいっぱいだった丸尾くんの心に、少し明るい光が差した気がした。

「新設された部署だから、体制はまだ小さいのよ。部長と課長、そして私と丸尾くんの4名体制」

角井さんは、笑顔で部署のメンバー構成を説明してくれた。心強い先輩が近くにいることに、丸尾くんは安堵した。

角井さんとの挨拶もそこそこに、伊藤部長に挨拶に向かう。
伊藤部長は、正和支店長の同期で、支店長曰く「同期で一番努力家で、自分の営業に自信を持っている奴」だという。背が高く、元ラガーマンらしい筋肉質な体つきをした、エネルギッシュな雰囲気の部長だった。

「おはようございます。本日付で広域営業部に異動になりました、丸尾です」

「おう!待ってたぞ、丸尾!これからよろしくな!」

伊藤部長は、豪快な声で丸尾くんを迎えてくれた。

その日は、伊藤部長から部署の方針説明を受け、事務担当の方から簡単なオリエンテーションを受けて終了した。新しい環境に慣れることと、期待に胸を膨らませる一日だった。

翌日、午前中からいよいよハトー屋に関する引き継ぎが始まった。
前任者は、この道25年のベテラン営業マン、佐藤さん。
佐藤さんからは、これまでのハトー屋との取引の経緯や、ハトー屋特有の商慣習など、覚えなければならないことが山ほどあった。

「ハトー屋さんはね、とにかく歴史が長いから、色々と独特なやり方があってね…」

佐藤さんの話を聞いていると、自分が想像していた以上に複雑な得意先だと感じた。

午後、佐藤さんの営業車に同乗し、早速ハトー屋の本部へと向かった。
アポイントは既にとっていただいているとのこと。

前任者の予期せぬ退職と、引き継ぎに潜む情報共有の課題

ハトー屋への道中、丸尾くんは佐藤さんにハトー屋のバイヤーである山葉さんのことや、仕掛中の商談について詳しく説明を求めた。

「佐藤さん、山葉バイヤーはどのような方なんですか?何か注意すべき点はありますか?」

佐藤さんからは明確な回答があった。

「山葉さんは真面目で勉強熱心な方だよ。データを重視するタイプだから、しっかり準備して臨んだ方がいい。」

「秋のキャンペーンの商談ってどうなっていますか?」

「あの件は、申し訳ないがまだ途中なんだ。引き継ぎまでに整理しておくから。」

佐藤さんは、「時間が足りなくて申し訳ないが、できる限り詳しい資料を用意しておく」と言ってくれた。丸尾くんは、心強いと思う反面、不安も感じていた。

ハトー屋の本部は、支店時代に行ったどの得意先よりも広い、とても大きな建物だった。待合室も広く、他のメーカーの営業マンらしき人も何人も待っていた。

しばらくして、自分たちの順番が来た。商談ブースに入ると、ハトー屋の山葉バイヤーと、帳合の三国食品東京本社の鈴木さんが待っていた。山葉バイヤーは30代半ばくらいの、切れ者といった雰囲気の人だった。

名刺交換、着任の挨拶など、事務的なやり取りを終えると、山葉バイヤーは佐藤さんに対して、「佐藤さん、いままで本当にありがとうございました。次のお仕事も頑張ってください。」と労いの言葉をかけ、丸尾くんに対して「丸尾さん、次回からよろしくお願いします」と挨拶を終えた。

本部を出て、近くのファミレスに入った。落ち着いたところで、丸尾くんは佐藤さんに改めて話を聞いてみた。

「佐藤さん、山葉バイヤーが仰っていましたが次のお仕事決まっているんですか?」

すると佐藤さんは驚いたような表情を見せた。

「あれ?私の退職理由って聞いていないの?」

佐藤さんの話は以下の通りだった。佐藤さんのご実家がお酒の蔵元でお父様が倒れられたので、佐藤さんが家業を引き継ぐことになったという事だった。


「急な話で、丸尾や会社、お得意先にも迷惑をかける事になってしまって本当に申し訳ない。」

佐藤さんは丸尾くんに深々と頭を下げた。

「正直、ハトー屋さんをこんな形で手放すのは心残りでならない。引き継ぎ時間が短くて、君には本当に迷惑をかける。でも、君なら大丈夫だ。」佐藤さんは丸尾くんに対して何度も謝罪をした。
「もし何かあったら、いつでも連絡してくれ。実家に戻っても、営業は営業だからな。」

丸尾くんは不安を感じながらも、佐藤さんの意志をついで自分が頑張らねばと思いを新たにしました。

その後、引き継ぎのために三国食品の本社に立ち寄りました。

担当の鈴木さんは「佐藤さん、急なことで大変でしたね。ご実家に戻られても頑張ってください。また一緒に商売をしましょう!」と声を掛けていた。

「そうですね!ぜひよろしくお願いします。丸尾さんのこともよろしくお願いします!」と佐藤さんが返事をすると、鈴木さんは「もちろんです。丸尾さん、何かあれば遠慮なく相談してください。」と丸尾くんに声を掛けた。


今回の引き継ぎで、佐藤さんが得意先のバイヤーや卸の担当者から高い信頼をえていることを理解した丸尾くん。佐藤さんの後任として恥ずかしくない仕事をしなければ、と覚悟を決めるのであった。

次回予告

佐藤さんからの心のこもった引き継ぎを受けた丸尾くん。しかし、立ち止まっている暇はない。いよいよ山葉バイヤーとの初回単独商談が始まる。慌ただしい引き継ぎの中で、丸尾くんは思わぬ「情報の抜け漏れ」に直面することになる…。そして、これが大きな課題へと発展していく…!?

次回、「第4話【商談トラブル対応力】進行中の商談情報の伝達ミスはなぜ発生した?」お楽しみに!